
ビットコインが8.6万ドル台に急落する中、誰が売却しているのかという疑問が市場で高まっている。資産運用会社バンエックと投資銀行JPモルガンが19日〜20日に公表した分析レポートから、保有期間別の詳細データを読み解き、現在の売り圧力の正体を明らかにする。
- 保有期間別の売却データ詳細
- 長期保有者vs中期保有者の動向
- 個人投資家とETF資金流出の関係
- 大口投資家の実際の行動
目次
バンエック分析:中期保有者が主要な売り手
資産運用会社バンエック(VanEck)は19日に公表したレポートで、ビットコインの最近の売り圧力が長期保有の大口投資家ではなく、中期保有者によるものだと分析した。
同社は5年以上保有されているビットコインが増加を続けており、売却は主に保有期間3〜5年の中期投資家に集中していると指摘した。
- 1万〜10万BTC保有層:過去6カ月で6%減、12カ月で11%減
- 100〜1,000BTC保有層:過去6カ月で9%増、12カ月で23%増
- 短期データ:1万〜10万BTC保有層が過去30日・60日・90日でそれぞれ約3%、2.5%、0.84%増加
この短期データは、トランプ関税発表後の急落で大口投資家が買い増しした可能性を示唆している。
保有期間別分析:3〜5年層が大量売却
最終移動時期別の分析では、過去30日間の売り圧力は保有期間5年未満の層に集中し、5年以上保有されているビットコインはほぼ維持または増加していた。
特に3〜5年前に取得された層が各調査期間で一貫して減少し、過去2年間で32%減少した。これらは前回のビットコイン相場低迷期に取得されたもので、保有者は長期投資家ではなく機会主義的なサイクルトレーダーとみられる。
一方、5年以上保有されているビットコインは2年前と比べて27万8,000BTC純増した。これは保有期間の短いコインが5年超のカテゴリーに移行したことを反映しているが、長期大口保有者の確信が続いていることを示している。
ETF流出は個人投資家が主因
JPモルガン・チェースのアナリストは20日のレポートで、ビットコインが同行の推定生産コスト9万4,000ドルを下回った最近の調整局面について、仮想通貨ネイティブ投資家ではなく主に個人投資家による現物ETFの売却が要因だと分析した。
- 暗号資産ETF:ビットコインとイーサリアムから約40億ドル流出(2月の流出記録を上回る)
- 株式ETF:個人投資家が約960億ドルを投入、月末までに1,600億ドルに達する見込み
- 特徴:個人投資家は暗号資産と株式を別の資産として扱っている
ニコラオス・パニギルツォグル常務取締役率いるアナリストチームは「10月の調整は永久先物の大幅なレバレッジ解消が原因だったが、11月は安定化した」と述べた。
初期保有者の売却は終了
11月14日週には「サトシ時代」の大口保有者が保有する15億ドル相当の全ビットコインを売却したことで、仮想通貨コミュニティに弱気ムードが広がった。恐怖・貪欲指数は3月以来の低水準(極度の恐怖)に達している。
バンエックによると、フラッシュクラッシュが発生した10月10日以降、ビットコインETP(ETF含む商品)からは4万9,300BTCが流出し、総運用資産の約2%に相当する。
- 5年以上保有のビットコインは27万8,000BTC純増
- 大口投資家は直近30日で買い増し
- 初期保有者の売却が完了(今後の売り圧力軽減)
- 10月のレバレッジ解消は完了、11月は安定化
今回のデータ分析から見えてくるのは、「長期保有者は売っていない」という事実です。売り圧力の主体は保有期間3〜5年の中期投資家、つまり前回の弱気相場(2021〜2022年)で購入したサイクルトレーダーです。彼らは長期的なビットコインの価値を信じているわけではなく、サイクルの高値で利益確定することが目的です。一方、5年以上保有している真の長期投資家は増加を続けており、大口投資家も直近30日で買い増ししています。この構造を理解することで、現在の調整局面が一時的なものである可能性が見えてきます。








