
2025年11月13日、米国の暗号資産業界に新たな歴史が刻まれました。リップル社のXRPを原資産とする現物ETF「XRPC」が、ナスダックでの上場を承認されたのです。
これは、ビットコイン現物ETF、イーサリアム現物ETFに続く、米国で3番目のアルトコイン現物ETFとなります。
- XRP ETF承認の歴史的意義と、SECとの長年の法廷闘争の結末
- 機関投資家の参入加速とXRP市場への4つの具体的影響
- ビットコイン・イーサリアムとは異なるXRPの「国際送金特化」という設計思想
- ソラナ・カルダノ・ポルカドットなど、次に控えるアルトコインETFの展望
- 中央集権性のリスクと、投資家が理解すべき注意点
目次
ビットコイン、イーサリアムに続く第3のETF
XRPは、リップル社が開発した国際送金に特化した暗号資産で、銀行間の決済をより高速かつ低コストで実現することを目指しています。
しかし、XRPをめぐっては、米国証券取引委員会(SEC)との長年の法廷闘争があり、その規制上の位置づけが曖昧なままでした。
今回のETF承認は、XRPが「証券ではない」という判断が事実上確定したことを示すものであり、業界にとって極めて大きな意味を持ちます。
SECとの法廷闘争を経て実現した歴史的承認
XRPのETF承認は、決して順調な道のりではありませんでした。
2020年12月、SECはリップル社を提訴し、「XRPは未登録の証券である」と主張しました。
この訴訟は、暗号資産業界全体に大きな衝撃を与え、多くの取引所がXRPの取り扱いを停止しました。
しかし、2023年7月、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所は「XRPそのものは証券ではないが、機関投資家向けの販売は証券取引に該当する」という部分的勝訴の判決を下しました。
この判決により、XRPは一般の取引所での取引においては証券ではないという解釈が確立され、今回のETF承認への道が開かれたのです。
SECとの和解交渉も進展し、2024年には最終的な和解が成立。
リップル社は一定の罰金を支払うことで訴訟を終結させ、XRPの規制上の地位が明確になりました。
この一連の経緯が、今回のナスダック上場承認の大きな背景となっています。
XRPの事例は、暗号資産が規制当局との対話を通じて、明確な法的地位を獲得できることを示す重要な先例となりました。
これにより、他のアルトコインプロジェクトも、適切なコンプライアンス体制を構築すれば、米国市場で正式に認められる道が開かれたといえます。
XRP ETFの市場への影響
XRP現物ETFの上場は、市場に以下のような影響をもたらすと考えられます。
1. 機関投資家の参入加速
これまで、機関投資家がXRPに投資する際には、直接XRPを購入してカストディ(保管)する必要がありました。
しかし、ETFの形式であれば、既存の証券口座を通じて簡単に投資できるため、参入障壁が大きく下がります。
特に、年金基金やヘッジファンドなど、規制が厳しい機関投資家にとって、ETFは魅力的な投資手段となります。
2. XRPの流動性向上
ETFが上場されることで、XRPの取引量が増加し、流動性が向上します。
これにより、価格のボラティリティが低下し、より安定した投資対象となる可能性があります。
また、ETFを通じた需要増加が、XRP自体の価格を押し上げる要因となることも期待されます。
3. リップル社のビジネス拡大
XRPの認知度と信頼性が向上することで、リップル社の国際送金ビジネスも恩恵を受けます。
同社が提携する銀行や金融機関が増加し、XRPを利用した送金ネットワーク「RippleNet」の拡大が加速する可能性があります。
4. 他のアルトコインへの波及効果
XRPのETF承認は、他のアルトコインにとっても重要な先例となります。
ソラナ、カルダノ、ポルカドットなど、時価総額が大きく、技術的に優れたプロジェクトが次々とETF申請を行う可能性があり、暗号資産市場全体の成熟が進むでしょう。
XRP ETFの承認は、「ビットコイン以外の暗号資産も、適切な規制対応を行えば金融商品として認められる」という重要なメッセージを発しています。
これは、ビットコインが唯一の「真の暗号資産」という見方を超えて、多様なユースケースを持つ暗号資産が共存するエコシステムが形成されつつあることを示しています。
XRPの特徴と国際送金における役割
XRPがビットコインやイーサリアムと異なるのは、その設計思想です。
ビットコインは「価値保存」や「検閲耐性」を重視した分散型通貨であり、イーサリアムは「スマートコントラクト」による分散型アプリケーションの基盤です。
一方、XRPは「国際送金の効率化」に特化しています。
従来の国際送金システム(SWIFTなど)は、複数の中継銀行を経由するため、送金完了まで数日かかり、手数料も高額でした。
XRPを使用することで、送金は数秒で完了し、手数料も数円程度に抑えられます。
この技術は、特に発展途上国での送金需要が高く、リップル社は中東、アジア、南米の金融機関との提携を拡大しています。
ただし、XRPには「中央集権的」という批判もあります。
XRPの大部分はリップル社が保有しており、同社が市場に供給するXRPの量をコントロールしています。
これは、ビットコインのような完全分散型のモデルとは異なり、リップル社の経営判断に依存する部分が大きいことを意味します。
XRPの中央集権的な性質は、規制当局にとっては管理しやすい一方、暗号資産の本来の理念である「非中央集権性」からは外れています。
投資家は、このリスクを理解した上でXRP ETFに投資する必要があります。
今後の展望——アルトコインETF時代の幕開け
XRP現物ETFの上場承認は、暗号資産市場における「アルトコインETF時代」の幕開けを告げるものです。
ビットコインとイーサリアムに続き、今後は以下のようなアルトコインのETFが申請・承認される可能性があります。
ソラナ(SOL)
高速なトランザクション処理能力を持ち、DeFiやNFT分野で人気が高い。
すでに複数の資産運用会社がソラナETFの申請を行っており、2026年中の承認が期待されています。
カルダノ(ADA)
学術的なアプローチで開発されたブロックチェーンで、エネルギー効率の高いProof of Stakeを採用。
環境意識の高い投資家から支持されています。
ポルカドット(DOT)
異なるブロックチェーン間の相互運用性を実現する「パラチェーン」技術を持つプロジェクト。
ETF化により、機関投資家の関心が高まる可能性があります。
これらのアルトコインがETFとして承認されることで、暗号資産市場全体の流動性が向上し、より多様な投資機会が提供されるようになるでしょう。
アルトコインETFの増加は、暗号資産市場が「投機的な段階」から「成熟した投資市場」へと移行しつつあることを示しています。
投資家は、それぞれのプロジェクトの技術的特徴やユースケースを理解した上で、分散投資を行うことが可能になります。
結論——XRP ETFが示す暗号資産の未来
米XRP現物ETF「XRPC」のナスダック上場承認は、暗号資産業界にとって歴史的な瞬間です。
ビットコイン、イーサリアムに続く第3のETFとして、XRPは規制の明確化を経て、正式な金融商品として認められました。
この動きは、暗号資産が「投機対象」から「投資資産」へと進化し、伝統的な金融市場との統合が進んでいることを示しています。
今後、さらに多くのアルトコインがETFとして承認されることで、投資家にとっての選択肢が広がり、市場全体の成熟が加速するでしょう。
ビットコイン予備校の視点から見れば、XRP ETFの承認は「多様性の尊重」を象徴しています。
ビットコインの分散型哲学、イーサリアムのスマートコントラクト、XRPの国際送金効率化——それぞれが異なる役割を果たしながら、共存する未来が現実のものとなりつつあります。
投資家として重要なのは、それぞれの暗号資産の特性を理解し、自分の投資目的に合った選択をすることです。
XRP ETFの登場により、その選択肢がまた一つ増えたことを、前向きに捉えましょう。








