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歴史が動いた。三菱UFJ、みずほ、三井住友──日本を代表する3つのメガバンクが、手を組んだ。目指すは、バラバラではなく「ひとつ」のデジタル通貨。

金融庁が動いた──決済高度化プロジェクト(PIP)の誕生

2025年11月7日、金融庁は歴史的な発表を行った。

決済分野に特化した新組織「決済高度化プロジェクト(PIP)」を立ち上げ、その初の支援案件として、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3メガバンクによる共同ステーブルコイン発行の実証実験を承認したのだ。

これは単なる実証実験ではない。

複数の銀行グループが単一ブランドで電子決済手段を共同発行する日本初の試みであり、世界的に見ても先駆的な取り組みとなる。

国を挙げた金融イノベーション推進──その本気度が、この発表から伝わってくる。

100万円の壁が消える──信託型の革新性

この実証実験で最も注目すべきポイントは、100万円の送金上限が撤廃されるという点だ。

既存の外国電子決済手段や第二種資金移動型電子決済手段には”100万円の送金上限”が課されているが、今回の信託型ステーブルコインの枠組みではこの制約が適用されない。

これが何を意味するのか?

企業間の大口決済、国際貿易、グローバル送金──これまでデジタル通貨では実現できなかった大規模な資金移動が可能になるということだ。

なぜ「共同発行」なのか──規格乱立という悪夢を回避する

ここで重要な問いが浮かぶ。

なぜ各銀行が個別にステーブルコインを発行するのではなく、共同で発行するのか?

答えは明快だ──規格の乱立を防ぐため

想像してみてほしい。三菱UFJコイン、みずほコイン、三井住友コイン……それぞれが独自の規格で流通する世界を。利用者は複数のウォレットを使い分け、両替の手間が発生し、決済の効率性は大きく損なわれる。

この共同発行の狙いは、まさにその悪夢を回避することにある。

単一ブランドで規格を統一することで、デジタル決済の普及を加速させ、日本全体のデジタル経済基盤を強固にする──それがこのプロジェクトの真の目的だ。

円だけではない──米ドル建ても視野に入れる戦略

さらに注目すべきは、今回の実証実験が円建てだけでなく米ドル建てステーブルコインも視野に入れている点だ。

これは何を意味するのか?

日本のステーブルコインが、国内決済だけでなく国際決済の基盤として機能する可能性を示唆している。

技術面ではProgmatがインフラ支援を担当し、まずは三菱商事のグローバル決済での活用から開始する予定だ。つまり、最初から「実用レベル」を目指している。

実験室の中だけで終わらせない──その強い意志が、この構想から読み取れる。

世界との競争──JPモルガン、INGを追い越せるか

海外に目を向けると、JPモルガンやINGなど大手金融機関も銀行コンソーシアムによるステーブルコイン発行を進めている。

しかし──。

日本がこの分野で先行して実用化に踏み出す形となった。高市内閣で新たに就任した片山さつき財務大臣も本取り組みへの支援を表明しており、政府の本気度が伝わってくる。

Progmatの齊藤達哉氏は、この動きを「株式トークン」「トークン化法」に続く歴史的な動きとして位置づけ、5年から10年先を見据えた長期的な取り組みであることを強調している。

つまり──。

これは短期的な実験ではなく、日本の金融インフラそのものを再構築する壮大なプロジェクトなのだ。

三菱UFJ信託銀行が受託者──信託型という選択の意味

今回の実証実験では、三菱UFJ信託銀行を受託者とする信託型ステーブルコインの枠組みが採用される。

なぜ「信託型」なのか?

信託型では、利用者が預けた資金が信託銀行によって厳格に管理される。発行主体である銀行が倒産しても、利用者の資産は保全される仕組みだ。

これは──。

安全性と信頼性を最優先する日本の金融システムの特徴を反映したものであり、海外の多くのステーブルコインが抱える「発行主体の信用リスク」を大幅に軽減する設計となっている。

静かに始まった革命──規格統一がもたらす未来

この実証実験は、派手な発表ではなかったかもしれない。

しかし、その裏には──日本の金融システムそのものを変革する静かな革命が始まっている。

100万円の上限撤廃、規格の統一、米ドル建ての展開、信託型による安全性──。

これらすべてが揃ったとき、日本のデジタル通貨インフラは、世界で最も洗練されたシステムとなる可能性を秘めている。

実証実験終了後には、コンプライアンスや監督対応上の論点、法令解釈に関する実務上の課題などを含む結果が金融庁ウェブサイトで公表される予定だ。

歴史は、大きな変革がいつも「小さな一歩」から始まることを教えてくれる。

参考記事

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