
2025年11月13日、米ブルームバーグ通信が、日本取引所グループ(JPX)が暗号資産をトレジャリー資産として大量保有する上場企業に対する規制強化を検討していると報じました。
この報道を受けて、Bitcoin Japan(BTCJPN)株がストップ安の水準となる前営業日比150円安の774円でウリ気配となり、市場に大きな影響を与えました。
- JPXによる暗号資産トレジャリー企業への規制強化検討の背景
- ブルームバーグ報道で明らかになった規制強化の選択肢
- 日本の上場企業3社が9月以降、暗号資産購入計画を保留した事実
- メタプラネットCEOの反論と適正手続きの主張
- 日本がアジア最多14社のビットコイン保有上場企業を抱える特異性
目次
ブルームバーグ報道が明らかにした規制強化検討
ブルームバーグは11月13日、事情に詳しい複数の関係者の話として、JPXが暗号資産トレジャリー企業に対する規制強化を検討していると報じました。
報道によると、JPXが選択肢として検討しているのは以下の通りです:
- 裏口上場につながり得る不適切な合併などに対するルールの厳格化
- 新たな監査義務の導入
ただし、現時点で具体的な方針は確定していないとされています。
規制強化の背景として、ブルームバーグは国内関連企業の株価急落を指摘しています。
その中で、東証に上場するメタプラネットの株価が年初に約420%急騰した後、6月中旬の高値から75%以上下落したことが伝えられています。
このような極端な価格変動が投資家保護の観点から懸念されています。
日本企業3社が暗号資産購入計画を保留
ブルームバーグの報道で特に注目されたのは、JPXの意向を受けて、すでに日本の上場企業3社が9月以降、暗号資産の購入計画を保留したという情報です。
これらの企業は、デジタル資産を保有する場合、資金調達能力が制限される可能性があると伝えられたという。
この事実は、JPXが非公式ながら既に暗号資産トレジャリー企業に対する抑制的な姿勢を示していることを示唆しています。
規制当局が「非公式に」企業の行動を抑制するという手法は、透明性の観点から問題があります。
明確なルールを策定し、公開することで、企業と投資家が適切に判断できる環境を整備することが重要です。
曖昧な規制は、市場の不確実性を高め、健全な発展を阻害します。
BTCJPN株がストップ安——市場の反応
ブルームバーグ報道を受けて、Bitcoin Japan(BTCJPN)がストップ安の水準となる前営業日比150円安の774円でウリ気配となりました。
BTCJPNは、堀田丸正から商号変更し、米バックト・ホールディングス傘下のバックト・オプコ・ホールディングスを筆頭株主に迎え、新たな経営体制のもとでビットコイン・トレジャリー事業を開始する方針を示していました。
11月11日開催の臨時株主総会で定款の一部変更が承認され、新規事業としてビットコイン・トレジャリー事業を開始する直前のタイミングでの規制強化報道となりました。
市場では、戦略の修正を余儀なくされるとの懸念が強まり、売り注文が殺到することとなりました。
BTCJPNにとって、臨時株主総会で承認を得た直後の規制強化報道は、事業計画に大きな影響を与える可能性があります。
株主総会での承認プロセスを経た後に規制環境が変化することは、企業の予見可能性を損なうものです。
メタプラネットCEOの反論
報道で社名が挙げられたメタプラネットのサイモン・ゲロヴィッチCEOは同日、自身のXで反応しました。
同氏は、報道で懸念点として触れられた裏口上場や不十分なガバナンス手続きについて、自社はこれに該当しないと主張しました。
「過去約2年間で計5回の株主総会を開催し、事業目的の変更やビットコイン取得のための授権株式数の増加など、全ての重要事項について株主の承認を経て進めてきた」と説明。
その上で、「メタプラネットにおいて、コーポレートガバナンスはすべての意思決定の基盤です」と述べ、適正な手続きを一貫して重視してきた姿勢を強調しました。
ゲロヴィッチCEOの主張は、「暗号資産トレジャリー企業=ガバナンス不足」という一律の見方に対する反論です。
適切な株主承認プロセスを経ている企業と、そうでない企業を区別した規制設計が求められます。
日本の特異性——アジア最多14社のビットコイン保有企業
ブルームバーグは、アジアの他の取引所が同様の企業の設立に慎重な姿勢を示す一方で、日本ではビットコイン保有上場企業が14社でアジア最多と、その特異な立ち位置に言及しています。
主な日本企業:
- メタプラネット:日本最大のビットコイン保有企業
- ネクソン:約1,717BTC保有(2021年購入)
- リミックスポイント:約500BTC保有
- マネックスグループ:子会社を通じて保有
- Bitcoin Japan(BTCJPN):トレジャリー事業開始予定
- その他9社
この14社という数字は、アジア全体で最多であり、日本市場の特異性を示しています。
アジアの他の取引所が慎重な姿勢を示す一方で、日本が14社を抱えるという事実は、日本市場の特異性を示しています。
香港、シンガポール、韓国などでは、より厳格な上場基準や事業変更審査が行われているため、同様の企業が少ない状況です。
規制強化の狙いと課題
JPXが規制強化を検討する背景には、投資家保護と市場の健全性確保という明確な狙いがあります。
規制強化の狙い:
1. 投資家保護
暗号資産の価格変動リスクを投資家が正確に理解できるようにすることで、不測の損失を防ぐ。
2. 裏口上場の防止
既存上場企業が事業目的を変更して暗号資産トレジャリー企業になる「裏口上場」を防ぎ、適切な審査プロセスを確保する。
3. 市場の信頼性向上
極端な株価変動を抑制し、市場全体の信頼性を向上させる。
一方で、課題も指摘されています:
1. イノベーションの抑制
過度な規制は、暗号資産分野での日本企業のイノベーションを抑制する可能性があります。
2. 既存企業への影響
既に適正な手続きを経て事業を開始した企業にとって、事後的な規制強化は予見可能性を損なうものです。
3. 国際競争力
米国では規制が緩やかであり、日本企業が過度な規制で競争力を失うリスクも考慮する必要があります。
規制強化は投資家保護とイノベーション促進のバランスが重要です。
一律に厳格化するのではなく、適正手続きを経た企業とそうでない企業を区別し、リスク開示の強化など、柔軟な規制設計が求められます。
今後の展望と投資家への示唆
今回の報道は、あくまで「検討段階」であり、具体的な規制内容や実施時期は不明です。
ただし、JPXが暗号資産トレジャリー企業に対して何らかの規制強化を行う方向性は明確になりつつあります。
投資家への示唆:
1. 規制リスクの認識
暗号資産トレジャリー企業への投資には、規制環境の変化というリスクが伴うことを認識する必要があります。
2. 企業の適正手続き確認
株主総会での承認プロセスなど、適正な手続きを経ている企業かどうかを確認することが重要です。
3. 分散投資
特定の暗号資産トレジャリー企業に集中投資するのではなく、リスク分散を心がけましょう。
規制強化は短期的には株価にネガティブな影響を与える可能性がありますが、長期的には市場の成熟と投資家層の拡大に寄与します。
透明性の高い規制環境でこそ、持続的な成長が可能になります。
結論——透明な規制設計が市場の健全な発展を促す
JPXによる暗号資産トレジャリー企業への規制強化検討は、投資家保護と市場の健全性確保という明確な目的を持っています。
現時点では「検討段階」であり、具体的な内容は確定していませんが、何らかの規制強化が行われる方向性は明らかです。
ビットコイン予備校の視点から見れば、今回の動きは「市場の成熟に向けた痛みを伴う調整」です。
暗号資産市場が健全に発展するためには、明確なルールと透明性が不可欠です。
重要なのは、一律に厳格化するのではなく、適正手続きを経た企業とそうでない企業を区別し、柔軟な規制設計を行うことです。
投資家、企業、規制当局が対話を重ね、バランスの取れた規制環境を構築することが期待されます。








