
- ビットコイン担保融資の基本的な仕組み
- LTV(貸付価値比率)とマージンコールの理解
- 銀行系とクリプト系サービスの違い
- 実際の活用シーンとリスク管理方法
- ビットコインを保有しているが、売却せずに現金が必要な方
- 長期保有しながら短期的な資金需要がある方
- 税金を抑えながら流動性を確保したい方
目次
ビットコイン担保融資とは?──売らずに現金を得る新しい選択肢
2025年12月、バンク・オブ・アメリカ(資産規模1.7兆ドル)がビットコインを担保とした融資サービスを開始したというニュースが、暗号資産市場に大きな衝撃を与えました。
出典: CryptoRank
ビットコイン担保融資とは、保有しているビットコインを売却せずに、それを担保として現金(法定通貨)を借りるサービスです。
■ 従来の選択肢との違い
| 方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ビットコインを売却 | 即座に現金化 | ・将来の価格上昇の恩恵を失う ・キャピタルゲイン税が発生 |
| 担保融資を利用 | ・ビットコインを保有し続けられる ・税金の先送り | ・金利負担 ・価格下落リスク |
米国の大手銀行が参入したことで、ビットコインが「投機的資産」から「担保として認められる資産」へと進化している証拠です。従来はBlockFi、Nexo、Celsiusなどのクリプト専門企業のみが提供していたサービスが、規制された伝統的な金融機関によって提供されるようになりました。
ビットコイン担保融資の仕組み──5つのステップ
ステップ1: ビットコインを担保として預ける
あなたが保有するビットコインを、融資サービス提供者(銀行またはクリプト企業)に預けます。この時点では、所有権はあなたに残りますが、融資期間中は担保として管理されます。
ステップ2: 融資額の決定(LTV比率)
融資額はLTV(Loan-to-Value:貸付価値比率)によって決まります。
例:あなたが1,200万円相当のビットコインを保有
LTV 50%の場合:
- 融資額 = 1,200万円 × 50% = 600万円
- これは「担保の50%まで借りられる」という意味
LTV 70%の場合:
- 融資額 = 1,200万円 × 70% = 840万円
- より多く借りられますが、リスクも高まります
主要プラットフォームのLTV比率:
- バンク・オブ・アメリカ: 50-70%(推定)
- JPモルガン: 50-70%
- Strike: 最大50%
- Nexo: 最大50%
出典: Cryptopolitan, Strike, Nexo
ステップ3: 現金を受け取る
審査が完了すると、指定した銀行口座に現金が振り込まれます。バンク・オブ・アメリカのような伝統的な銀行の場合、法定通貨(米ドル、日本円など)で受け取ります。
ステップ4: 金利の支払い
融資には金利がかかります。主要プラットフォームの金利は以下の通り:
- バンク・オブ・アメリカ: 4-6%(推定)
- 米国大手銀行平均: 4-6%
- クリプト系プラットフォーム: 2.9%〜(Nexoなど)
出典: Cryptopolitan
ステップ5: 返済と担保の返還
融資期間終了時に元本と利息を返済すると、担保としたビットコインが全額返還されます。
最大のリスク:マージンコールと清算(リクイデーション)
ビットコイン担保融資の最大のリスクは、ビットコイン価格の下落によるマージンコールです。
■ マージンコールとは?
ビットコインの価格が下落すると、LTV比率が上昇します。これが一定の水準(例:70%)を超えると、マージンコールが発動します。
初期設定:
- ビットコイン価格: 1,200万円
- 融資額: 600万円(LTV 50%)
- マージンコール水準: LTV 70%
- 清算水準: LTV 80%
価格が下落した場合:
- ビットコインが857万円まで下落
- LTV = 600万円 ÷ 857万円 = 70%
- → マージンコール発動
対処法(24-72時間以内):
- 担保を追加: 約343万円分のビットコインを追加預入
- 融資を一部返済: 融資額を減らしてLTVを下げる
対処しなかった場合:
- ビットコインが750万円まで下落
- LTV = 600万円 ÷ 750万円 = 80%
- → 清算(強制売却)
- あなたのビットコインが市場で売却され、融資が返済されます
出典: Strike, Arch Lending
銀行系 vs クリプト系──どちらを選ぶべきか?
| 項目 | 銀行系(例:バンク・オブ・アメリカ) | クリプト系(例:Nexo、Strike) |
|---|---|---|
| 対象 | 富裕層・機関投資家 | 一般投資家も利用可能 |
| 金利 | 4-6% | 2.9%〜 |
| LTV | 50-70% | 最大50-70% |
| メリット | ・規制された環境 ・信頼性が高い ・伝統的な銀行サービスとの統合 | ・低金利 ・柔軟な返済 ・迅速な審査 |
| デメリット | ・高い最低融資額 ・審査が厳しい | ・カウンターパーティリスク ・規制が不透明 |
出典: CryptoRobotics
銀行系を選ぶべき人:
- 大口の融資が必要(1,000万円以上)
- 規制された環境を優先
- 既存の銀行サービスと統合したい
クリプト系を選ぶべき人:
- 少額から始めたい(100万円〜)
- 低金利を優先
- 迅速な融資を希望
ビットコイン担保融資のメリット──3つの大きな利点
メリット① ビットコインを売らずに流動性を確保
最大のメリットは、将来の価格上昇の恩恵を受け続けられることです。
例: 現在1,200万円のビットコインを600万円で融資
- 1年後、ビットコインが2,000万円に上昇
- 融資を返済(600万円 + 利息30万円 = 630万円)
- 手元には2,000万円のビットコインが残る
- 実質的な利益: 2,000万円 – 1,200万円 – 30万円 = 770万円
もし最初に売却していたら、この770万円の利益を逃していました。
メリット② 税金の先送り
日本では、ビットコインを売却すると雑所得として課税されます(最高税率55%)。しかし、担保として預けるだけでは課税イベントが発生しません。
出典: Lightspark
| 行動 | 課税 |
|---|---|
| ビットコインを売却 | 課税される(雑所得) |
| ビットコインを担保に融資 | 課税されない |
※ただし、将来的に売却する際には課税されます。あくまで「先送り」であることに注意。
メリット③ 迅速な資金調達
伝統的な融資(住宅ローンなど)と比べて、審査が迅速です。
- クリプト系プラットフォーム: 数時間〜1日
- 銀行系: 数日〜1週間
- 伝統的な融資: 数週間〜数ヶ月
ビットコイン担保融資のデメリットとリスク
デメリット① 価格変動リスク
ビットコインは価格変動が激しいため、マージンコールや清算のリスクが常に存在します。
デメリット② 金利負担
金利は2.9%〜6%程度ですが、ビットコインの価格が横ばいまたは下落した場合、金利負担が重くなります。
デメリット③ カウンターパーティリスク
クリプト系プラットフォームの場合、企業の破綻リスクがあります。2022年にはBlockFi、Celsius、Voyagerなどが破綻し、多くのユーザーが担保を失いました。
参考: River Learn
- 低いLTVでスタート: 30-40%程度に抑えることで、価格下落の余裕を持たせる
- 定期的なモニタリング: LTV比率を毎日確認し、マージンコールに備える
- 緊急用資金を確保: マージンコールに対応できる現金または追加のビットコインを準備
実際の活用シーン──こんな時に使える
シーン① 不動産の頭金
ビットコインを長期保有したいが、住宅購入の頭金が必要な場合。
- 融資額: 1,000万円
- 融資期間: 5年
- ビットコインの価格上昇を期待しながら、住宅を購入できる
シーン② ビジネス資金
起業資金や事業拡大資金が必要だが、ビットコインを売却したくない場合。
- 融資額: 500万円
- 融資期間: 1年
- 事業で収益を上げながら、ビットコインの価格上昇も享受できる
シーン③ 一時的な資金需要
税金の支払いや大きな支出があるが、ビットコインを手放したくない場合。
- 融資額: 200万円
- 融資期間: 3ヶ月
- 短期間の資金繰りに活用
日本でビットコイン担保融資は使えるのか?
現時点(2025年12月)では、日本国内の銀行がビットコイン担保融資を提供している例はありません。しかし、以下の選択肢があります:
選択肢① 海外プラットフォームの利用
- Nexo(日本居住者も利用可能)
- その他の国際的なクリプト融資プラットフォーム
選択肢② ビットコインの運用サービス
担保融資ではありませんが、ビットコインを保有しながら運用益を得る方法もあります。
運用サービス
運用のメリット
- 価格上昇によるキャピタルゲイン + 運用益の二重取り
- 24時間自動で取引、手間がかからない
- APIによる自動運用なので資金を預ける必要なし(FLAREの場合)
もっと詳しく知りたい方へ
- 初心者向け取引所の選び方
- 海外取引所への送金方法ガイド
- 金商法移行で何が変わる?インサイダー規制の基礎知識【近日公開】
まとめ:ビットコイン担保融資は「売らない」という新しい選択肢
ビットコイン担保融資は、「保有し続けながら流動性を確保する」という新しい資産活用の形です。バンク・オブ・アメリカなど大手銀行の参入により、ビットコインが投機的資産から実用的な担保資産へと進化しつつあります。
メリット:
- ビットコインを売らずに現金を得られる
- 将来の価格上昇の恩恵を受け続けられる
- 税金の先送りが可能
リスク:
- 価格下落によるマージンコール
- 金利負担
- カウンターパーティリスク(クリプト系の場合)
重要なのは、低いLTVでスタートし、定期的にモニタリングすること。そして、マージンコールに対応できる余裕資金を確保することです。
ビットコイン担保融資は、長期保有者にとって強力なツールです。しかし、リスクを理解し、慎重に活用することが何よりも大切です。








