暗号資産に一律20%の分離課税を──JVCEAとJCBAが税制改正を共同要望
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「取引形態・登録有無を問わず」全てに適用する新制度を提案
日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は2025年7月30日、2026年度の税制改正に向けた共同要望書を金融庁に提出し、オンラインで説明会を開催した。
要望の柱は、暗号資産の売却益に対する20%の一律分離課税の導入、寄附に関する非課税措置の明確化、相続税制度の見直しなど。特に今回は「取引形態や登録事業者の有無に関係なく適用すべき」とする点が大きな特徴となっている。
Web3立国に逆行しない税制設計を
- 暗号資産の売却益に対する一律20%分離課税の導入
- 取引形態や登録事業者の有無を問わず課税対象とする
- 寄附・相続に関する非課税措置の整備
- Web3スタートアップへの過度な制約を回避
説明会では、ビットポイントジャパン社長の小田玄紀氏(JVCEA会長)や、ビットバンクCEOの廣末紀之氏(JCBA会長)が登壇。また、自動損益計算ツール「pafin」を提供する斎藤岳氏(税制検討部会部会長)が、技術的課題と制度の現実性について解説した。
登録業者のみに限定すれば、Web3全体に副作用も
斎藤氏は「登録事業者だけを対象にした制度設計は、Web3全体に悪影響を与える」と警鐘を鳴らす。Web3には交換所に限らずウォレットやNFT関連事業者も含まれ、実際にJCBA会員の4割がオンチェーンビジネスに関わっていると指摘した。
一見合理的に見える「登録業者のみ課税優遇」という線引きも、制度的な区別が現実的でなく、結果的に非登録事業者やスタートアップの活動を抑制する恐れがあるという。
アンホステッド取引への補足も可能
また、HashPort代表でJCBA理事を務める吉田世博氏は、課税補足の観点からもアンホステッド・ウォレット(自主管理型)を除外する理由はないと主張。「納税支援サービスがすでに普及しており、補足可能な環境は整いつつある」と説明した。
現在の制度では、ノンカストディアルな環境や無登録事業者での取引に対して明確な課税ルールが存在せず、税務の公平性に課題がある。今回の提案はそうした「ねじれ」を解消し、業界全体の持続的な成長と税制度の整合性を両立させる狙いがある。
税制による制約ではなく、制度整備による健全化を
斎藤氏は最後に「無登録業者への資金流出を防ぐには制度側の対応が必要であり、税制を“制裁的手段”として用いるべきではない」と語った。税制度はあくまで中立であるべきであり、過剰な制限はWeb3国家戦略に逆行するとの立場を示した。
今後は金融庁や国税庁との議論を踏まえ、より実効性のある税制度設計が求められる。
参考資料: CoinDesk JAPAN|暗号資産に20%の分離課税を、取引形態や登録有無を問わず一律適用を提案
記事作成日: 2025年7月30日