仮想通貨市場全体に関わる大きなイベントは、2023年3月末~4月頃(2023年4月12日22時27分35 秒(UTC))に予定されているイーサリアムの「シャンハイ」アップグレードです。※正しくは、「Shanghai–Capella」と呼ばれています。
なぜならブロックチェーンにステーキングされた1,650万以上のイーサリアム(ETH)の引き出しが可能になるからです。
(ただし即座に出金が可能な数量は、約100万ETHとなります。※2年以上ステーキングしている報酬)
今回の件で大きく分けて二つの意見があります。
- 売り圧に繋がるのでは?
- 逆に売り圧は限定的
目次
売り圧に繋がるのでは?
(売り圧優勢?)参考URL:https://www.coindeskjapan.com/175312/
※2023年2月時点
今回の上海アップグレードは、イーサリアムのブロックチェーンが「Merge(マージ)」と呼ばれる技術的な大改革を行い、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)方式からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)方式のコンセンサスメカニズムに切り替えた数カ月後に予定されているものだ。
トレーダーは、市場価値が2番目に大きい仮想通貨であるETHが、2022年9月15日にMergeが行われた後、あまり変動がなかったことを思い出し、今度のアップグレードも「イベントではない」と考えているかもしれない。
しかし、暗号資産オプションの流動性プロバイダーであるOrBit Marketsによれば、そのような結論は早計かもしれないという。
「今回は違うかもしれない」。
OrBit Marketの共同創業者で、ドイツ銀行のアジア太平洋地域デリバティブ部門の責任者だったヤン・チミン(Yang Zhiming)氏は、米CoinDeskに「Mergeは純粋な技術的変化で直接的には経済に影響はなかったが、シャンハイ・アップグレードは短期的にも長期的にもETHの需要と供給に変化をもたらす。したがって、ETHの価格に大きな影響を与えるだろう」と語っている。
Mergeでは、その名が示すように、それまでのPoWのブロックチェーンとPoSのビーコンチェーン(Beacon Chain)を結合した。この極めて重要なアップグレードにより、イーサリアムはより環境に優しくなり、デフレ通貨への道を歩み始めたが、暗号資産の需給に直ちに影響を与えることはなかった。
ETHの価格は当日に10%下落して1472ドルになったが、ボラティリティはすぐに低下し、その後の4週間は1300ドルから1400ドルの狭いレンジで取引された。
暗号資産データプロバイダーのアンバーデータ(Amberdata)によると、ETHの30日間の実現ボラティリティは、Merge後の4週間で年率85%から60%近くまで低下した。実現ボラティリティは、過去の特定期間に観測された価格変動の度合いを測定する指標だ。
今回の「シャンハイ」アップグレードは、すぐにでもイーサリアムの需給バランスに影響を与え、Merge後よりも不安定な状態にする可能性がある。
「約250億ドル相当のETHを引き出し、売却できるようになる。アップグレードに伴い、ステーキングの利回りが低下することが予想されるため、これまでステーキングしていた投資家はそれを解除し、より良い利回りを提供する他の資産に移動する可能性がある。そうなれば、ETH価格に大きな売り圧力がかかるだろう」とチミン氏は述べた。
Saxo Bankによると、1650万ETH以上のステーキング残高全体をアップグレード当日に引き出すことはできないが、Saxo Bankのマッズ・エバーハルト(Mads Eberhardt)氏が先月述べたように、これらのETHは市場で清算され、価格変動をもたらす可能性がある。
その上、アップグレード後の価格乱高下の懸念を市場が是認している証として、イベントまでの数日間、ETHが乱高下する可能性もある。
今回ETHの価格が下落するのではないか?と言われている理由として、
上海アップグレードには、開発環境を向上するための改善提案が複数盛り込まれているが、主な目的はバリデーターの出金機能のロックを解除する事だからです。
※2022年9月に完了したアップグレード「The Merge(マージ)」にて、イーサリアム・ネットワークのコンセンサス/アルゴリズムは、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフオブステーク)に移行しています。
売り圧に繋がる理由の一つに、
2023年2月9日大きくニュースとしても取り上げられましたが、米証券取引委員会(SEC)が米大手の取引所クラーケンを証券法違反で起訴したことを発表しています。
(参考URL)https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-02-08/RPS4W2T0AFB401
売り圧は限定的
(売り圧は限定的)参考URL:https://coinpost.jp/?p=433650
※2023年2月時点
先ほどのSECとクラーケンの続きですが、現在の結果としては、
- SEC:クラーケンが提供していたステーキングサービスは事前に登録する必要があったと主張
- クラーケン:罰金や不正利得などを含めた約39億円(3,000万ドル)を支払う
- クラーケン:米国でステーキングサービスの提供を即座に中止することに合意
現時点では両者はすでに和解しています。
これにより仮想通貨取引所クラーケンの出金分として、
- 少なくとも35万ETH
- 最大114.5万ETH
上記だと想定されています。
※クラーケンのステーキングETH数量は約7%(123万ETH)を占めている
分析会社TIEによる見解
ここまでの流れでは、ETHが市場から流出するややネガティブな情報ですが、、、
- 仲介サービスでステークされている64万ETH(67%)の報酬
- 1日当たり最大11.8万ETH(138億円)が売却
- 一定期間の出金量に上限
など、複利のために新規ステーキングに回されるという見立てです。
取引所バイナンスのリサーチ部門
※Lido:ETHステーキングの29.2%
仮想通貨取引所バイナンスのリサーチ部門が2023年2月16日、
イーサリアム(ETH)の「Shanghai(上海)」アップグレードに関するレポートを発表しています。※主にShaghaiリリース後の売り圧について分析
ステーキングをしているユーザー(ステイカー)の多くは流動性を得ているため、売り圧は限定的だとする見方を示した。
バイナンスは、現在イーサリアム(ETH)のステーキングを行っている者(ステイカー)の大半は含み損を抱えている状況であるため、現在のETH価格で売却する金銭的なインセンティブはほとんどないと指摘した。
その上でバイナンスは、Shanghaiアップグレードによりステーキングコントラクトに預けられているイーサリアムとステーキング報酬が出金可能になるが、出金方法には二種類あると述べる。
すなわち「部分的な出金」と「完全な出金」だ。
「部分的な出金」は、ステイカーが最初にビーコンチェーンに預けた32ETH以外(ステーキング報酬分)を指しており、この場合ユーザーは引き続きバリデータとして機能する。
バイナンスは、イーサリアムのステーキング報酬の合計は、103万ETH(時価2,300億円相当)であり、もしこれらがすべて出金されて売り圧になったとしても、数日、あるいは数週間に分散されるだろうと説明。
現在、イーサリアムの1日の取引高が約1,1兆円~1.3兆円(80~100億ドル)に近いことを考えると、こうした部分的な引き出しがイーサリアム価格に大きな影響を与えることはないと分析している。
■ETHのステーキング割合
- 29%:リキッドステーキングプロバイダーのLido(約50億ETH)
- 26%:米国の大手取引所コインベース、バイナンス、クラーケン
- 25%:個人投資家
バイナンス・Lido・コインベースはETHのステーキングを行うユーザーに対して、それに応じた独自のトークンを発行しています。
例)ステーキングされたETHに対して提供
- Lido:stETHトークン
- Binance:BETHトークン
- コインベース:cbETHトークン
など、独自のトークンを発行しており、Lidoに関してはstETHをレンディングの担保としたり、DEX(分散型取引所)等で運用することができるので、上海アップデート後にも市場に即出金する可能性は大きくないと考えられます。
リアルチャート|ETH