
ETHを会社の資産として大量に持つ米国の上場企業BitMine(ビットマイン)は、毎週月曜(米国の日付)に保有量を発表しています。その発表で「1週間で買ったETH」は、9月28日が17,362ETH、10月5日が15,112ETH、10月12日が12,532ETHと、3回の発表で続けて少なくなりました。当校の10月12日〜18日分の週間まとめでも、ETHの項目で取り上げた出来事です(リンクは記事の最後にまとめています)。週間まとめの後に出た10月19日の発表では12,535ETHで、前の週とほぼ同じでした。
大きな会社が買う量を減らした、と聞くと、「その会社がETHから手を引き始めたのでは」と考えたくなります。この記事は、減った理由を当てにいきません。渡すものは1つだけです。
大口の企業の買いのニュースは、保有量の大きさではなく、毎週の発表の「1週間で買った量」を並べ、その会社が自分で掲げた目標までの残りと合わせて読む。
材料は、会社が毎週出している発表文だけです。4週分を並べると、読者が自分で確かめられます。
※ この記事は、ETHや特定の銘柄の売り買いを勧めるものではなく、価格の見通しも示しません。保有量・買った量は、いずれも同社の発表に書かれた数字です。日付は、断りのない限り米国の日付で書きます。
目次
塾長とミサキ
晩秋の月曜の夜。ミサキは寝る前に、予備校の週間まとめをスマートフォンで読んでいた。ETHの欄で指が止まり、塾長にメッセージを送る。
ミサキ
塾長
ミサキ少しして、週間まとめを読み返したミサキから、続きが届いた。
ミサキ
塾長
ミサキ
塾長
ミサキ
ミサキ
塾長1. 先に、1つだけ予想してください
塾長があとで送ってきたのは、同社が9月28日から10月19日までの4回の発表で書いた数字です。表を見る前に、予想してください。
買う量が続けて減ったのはなぜか。4回の発表に書いてあるのは、どちらでしょう。
① 会社がETHを見限り始めたから
② 「発行量の5%」の目標に近づいたから
決めてから、次へ進んでください。
2. 4週分の発表を並べる
| 発表日 | 保有量の時点 | 1週間で買った量 | 保有量 | 発表に書かれた割合 |
|---|---|---|---|---|
| 9月28日 | 9月27日 | 17,362 ETH | 6,001,302 ETH | 発行量の4.9% |
| 10月5日 | 10月4日 | 15,112 ETH | 6,016,414 ETH | 発行量の4.9% |
| 10月12日 | 10月11日 | 12,532 ETH | 6,028,946 ETH | 発行量の4.9% |
| 10月19日 | 10月18日 | 12,535 ETH | 6,041,481 ETH | 発行量の4.9% |
10月5日からの3回は、保有量の前の週からの増え方が、その週の「1週間で買った量」とぴったり同じです(6,016,414 − 6,001,302 = 15,112、など)。表の数字どうしで、読者も引き算で確かめられます。
答え:どちらも書いてありません
4回の発表に書いてあるのは、「1週間で買った量」「保有量」「発行量に対する割合」と、会社の会長の次の2つの言葉です。
- 2025年6月30日にETHを会社の資産として持つ方針を始めてから、毎週ETHを買ってきた(4回の発表すべてに同じ文があります)
- 「発行量の5%」の目標に近づいている(10月12日の発表)
量が減った理由は、どの発表にも書かれていません。②を選んだ方は、「でも、目標に近いと会社が言っているのに」と思うかもしれません。ただ、会社は「目標に近い」と「量が減った」を、理由と結果としてつないではいません。当校の週間まとめは「目標に近づくにつれて買う量が減っているので」と、2つをつないで書きました。ただ、会社自身は、そうつないで説明してはいません。①についても、会社がETHから手を引くと書いた箇所はありません(発表の末尾の注意書きに少し気になる一文があるので、それは第6章で扱います)。
理由は分からない。分かるのは、毎週の量と、目標と、今の数。 この3つだけで、どこまで読めるかをやってみます。
「4.9%」の列は、4回とも同じ表示です
表のいちばん右の列を見てください。会社が自分で書いている割合は、4回とも「発行量の4.9%」です。小数第1位までの表示では、1か月のあいだ何も変わっていないように見えます。
同じ割合を、発表の数字で小数第2位まで計算すると、こうなります(当校の計算です)。
6,001,302 ÷ 1億2,210万 = 約4.92%(9月27日時点)
6,041,481 ÷ 1億2,210万 = 約4.95%(10月18日時点)
1か月で動いたのは、0.03ポイントほどです。「保有量」や「割合」を見ていても、買い方の変化はほとんど見えません。変化がはっきり出るのは「1週間で買った量」の行だけです。 ミサキが最初に「600万ETHも持ってる会社が」と保有量の大きさに目を向けたように、大きな数字は目立ちますが、それだけでは買い方の変化は読めません。
3. 目標までの残りを、自分で計算する
会社の目標は「発行量の5%」です。発表に書かれた発行量(1億2,210万ETH)で計算すると、
1億2,210万 × 5% = 610万5,000 ETH(目標)
610万5,000 − 6,041,481(10月18日時点の保有量)= 63,519 ETH(残り)
目標に対して、すでに約99%まで来ています(当校の計算)。「目標に近づいている」という会社の言葉は、数字の上ではこういうことです。
残りの63,519ETHを、直近の1週間で買った量(12,535ETH)で割ると、約5.1週ぶんになります。ただし、これは「この先も毎週同じ量を買い続けたら」という仮の計算で、目標に届く時期の予測ではありません。 実際、買う量はこの1か月で週17,362ETHから12,535ETHまで動いています。
それでも、この割り算をしておくと、「週1万2千ほどの買い」が、目標から見てどれくらいの大きさなのかが分かります。600万という保有量の横に置くと小さく見える数字が、残りの6万3千の横に置くと、そうは見えなくなります。
4. 「5%」の分母は、止まっている数ではありません
1つ注意があります。この計算で分母にした「発行量1億2,210万ETH」は、同社の発表に書かれた数字です。4回の発表とも同じ「1億2,210万」で、当校は同社以外の資料ではまだ確かめていません。
そのうえで、ETHの発行量そのものが、決まった数で止まる仕組みではありません。イーサリアムの公式サイト(ethereum.org)は、こう説明しています。
Unlike Bitcoin’s fixed 21 million cap, ETH has dynamic supply mechanics
ビットコインの2,100万という固定の上限とは違い、ETHの供給量は動く仕組みになっている。(当校による訳)
同じページによると、ネットワークの運営に参加する人への報酬として新しいETHが発行される一方で、取引の手数料の一部は「焼却」されて消えます。そのため、ETH全体の数は、増える時期も減る時期もあります。
つまり、「発行量の5%」は、610万5,000ETHという固定の枚数ではありません。 分母が動けば、目標の枚数も動きます。毎週の確認では、保有量と一緒に、発表に書かれた発行量の数字も見ておく必要があります。
5. 先週の「来週確認すること」の答え合わせ
当校の10月12日〜18日分の週間まとめは、「来週確認すること」に「BitMineの買う量がさらに減るか」を挙げていました。その答えが、10月19日の発表です。
10月12日の発表:12,532 ETH
10月19日の発表:12,535 ETH
さらに減ってはいませんでした。前の週より3ETH多く、ほぼ同じ量です。続いていた減り方は、4回目の発表では続きませんでした。
ただし、1週分の数字で、ここから先の向きを決めることはできません。言えるのは、10月18日までの1週間も同社は買っていて、その量は前の週とほぼ同じだった、ということまでです。
6. この記事で言えないこと
買う量が減った理由。 4回の発表のどこにも、理由は書かれていません。
買うお金の出どころ。 この記事では、同社がどこからお金を用意して買っているかを、一次情報で確かめていません。
目標の5%に届いた後、買い続けるのか、やめるのか。 同社は方針を公表していません。発表の末尾には、将来についての記述を並べた注意書きの一覧があります。10月12日の発表のその一覧には、「同社がETHをおおむね買い終えた、という経営陣の発言」という言葉がありますが、当校が保存した発表の本文には、その発言そのものは見当たりません。10月19日の発表では、同じ箇所が「毎週のETHの買い増しを続けること」についての記述に変わっています。9月28日と10月5日の発表の同じ箇所も「毎週のETHの買い増しを続けること」で、書き方が違ったのは10月12日の1回だけです。どちらも方針の発表ではないため、この記事は、一覧の書き方がその週だけ違った、という事実までにとどめます。
ETHの値下がりとの関係。 発表の計算に使われたETHの値段は、10月11日時点の2,544ドルから、10月18日時点の2,365ドルに下がっています。当校の週間まとめでも、ETHは10月12日〜18日の1週間で約5.2%下がりました。ただ、同社の買う量の変化と値段の動きが重なっているのは時期だけで、どちらかがもう一方の原因だと示す一次情報はありません。
塾長とミサキ(続き)
翌朝の通勤電車。ミサキは、塾長から届いた表を見返してから、メッセージを打った。
ミサキ
塾長
ミサキ
ミサキ
塾長今日できること
大口の企業の買いのニュースを見たら、会社の発表文で次の2か所を探してください。BitMineの場合、発表は米国の毎週月曜の日付で、PR Newswireに載ります。英語ですが、読むのは数字だけです。
① 「Over the past week, we acquired ○○ ETH」:1週間で買った量。前の週の数字の横に書き足します
② 「the Company’s crypto holdings are comprised of ○○ ETH」:その時点の保有量。同じ段落の最後の「(of ○○ million ETH)」が、会社が使っている発行量です
①を毎週並べれば、買い方の変化が見えます。②の2つの数字があれば、「発行量 × 5% − 保有量」で、目標までの残りを自分で計算できます。
この記事の一次情報と確認日
下の資料は、2026年10月20日に本文を取得して保存し、引用と数字はその保存版と照合しています。発表文の社名の表記は「Bitmine」ですが、この記事では当校の週間まとめに合わせて「BitMine」と書いています。
一次情報(会社の発表)
- Bitmine Immersion Technologies (BMNR) Announces ETH Holdings Reach Over 6 Million Tokens(PR Newswire、2026年9月28日):1週間で17,362ETHを買ったこと。9月27日時点の保有量6,001,302ETH、発行量1億2,210万ETHの4.9%。
- Bitmine Immersion Technologies (BMNR) Announces ETH Holdings Reach 6.02 Million Tokens(PR Newswire、2026年10月5日):1週間で15,112ETHを買ったこと。10月4日時点の保有量6,016,414ETH、4.9%。
- Bitmine Immersion Technologies (BMNR) Announces ETH Holdings Reach 6.03 Million Tokens(PR Newswire、2026年10月12日):1週間で12,532ETHを買ったこと。10月11日時点の保有量6,028,946ETH(ETHの値段2,544ドル)、4.9%。「発行量の5%」の目標に近づいているという会長の言葉。将来についての記述の一覧(ii)の書き方。
- Bitmine Immersion Technologies (BMNR) Announces ETH Holdings Reach 6.04 Million Tokens(PR Newswire、2026年10月19日):1週間で12,535ETHを買ったこと。10月18日時点の保有量6,041,481ETH(ETHの値段2,365ドル)、4.9%。2025年6月30日から毎週ETHを買ってきたという会長の言葉。将来についての記述の一覧(ii)の書き方。
一次情報(イーサリアムの公式サイト)
- ethereum.org「What is ether (ETH)?」:ETHにはビットコインのような固定の発行上限がなく、新しい発行と手数料の焼却で、供給量が増える時期も減る時期もあること。英語のため、本文中の訳は当校によるものです。
当校の計算
- 割合の小数第2位(約4.92%・約4.95%)、目標の610万5,000ETH、残り63,519ETH、目標に対する約99%、残り÷直近の1週間の量=約5.1は、上の発表の数字から当校が計算したものです。発表には載っていません。
この記事が確認していないこと
- 買う量が減った理由と、買うお金の出どころ
- 目標の5%に届いた後の方針
- 同社の買い方の変化と、ETHの値段の動きとの関係
- ETH全体の発行量1億2,210万ETH(同社の発表に書かれた数字で、同社以外の資料では確かめていません)
当校の関連記事
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連載「ミサキの0からクリプト」
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