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「株がブロックチェーンに載る」「暗号資産(仮想通貨)の取引所で、アメリカの株が買える」。こうした話は「トークン化株式」と呼ばれます。見出しだけを読むと、「暗号資産の取引所で株を持てて、株主になれる」と思えるかもしれません。

この記事で、先に答えを1つだけ書きます。

「トークン化株式」を見たら、発行元の説明で次の2つを確かめてください。①元の株を保管して裏付けている型か、値段が株価に合わせて決まる会社との契約(デリバティブ)の型か。②議決権や配当など、株主の権利が付くか。元の株で裏付けている型でも株主の権利が付かない例があるので、この2つは別々に確かめる必要があります。

海外で実際に提供されている2つの例を、発行元・提供元の説明(英語)で並べて確かめます。どれも記事の最後にリンクを置いているので、同じ文を自分で開けます。

※ 情報提供のみを目的としています。特定の銘柄や商品の売買、特定の取引所・サービスへの登録は勧めません。価格の見通しも示しません。ここで名前を挙げる会社は、仕組みを確かめるための例です。確かめられなかったことは、記事の後半にまとめています。

塾長とミサキ

十月下旬の昼休み。塾長のスマートフォンに、ミサキから短いメッセージが続けて届いた。

ミサキミサキ
「塾長、ニュースアプリで『株がブロックチェーンに載る』っていう記事を見ました」
ミサキミサキ
「海外の暗号資産の取引所で、アメリカの株が1ドルから買えるみたいです。1ドルで株主になれるなら、私でも始められそうで」
塾長塾長
「1ドルは、目に入るな。……それを買うと何が手に入る、と書いてある?」
ミサキミサキ
「何がって……株、ですよね」

少し間があって、もう一通届いた。

ミサキミサキ
「読み直しました。記事に書いてあったのは『株』じゃなくて、『株価に連動するトークン』でした」
ミサキミサキ
「株主になれる、は、私が足してました」
塾長塾長
「足したくなる見出しではある」
ミサキミサキ
「……連動するって、株を持つのと、何が違うんですか」
塾長塾長
「発行している会社の説明に、書いてあるはずだ。並べてみよう」

1. 「トークン化株式」は、株そのものとは限りません

当校が確かめた2つの例は、どちらもブロックチェーンの上で扱う「株の値段に連動するトークン」でした。ただ、中身は同じではありませんでした。

  • Kraken(クラーケン)の「xStocks」:暗号資産取引所のKrakenが扱っている商品です。KrakenのFAQは、xStocksを「実在する米国の株とETF(上場投資信託)を、トークンにして表したもの」と説明しています。ソラナやイーサリアムなどのブロックチェーンの上でトークンとして発行され、対応するウォレット(暗号資産を管理する道具)へ引き出すこともできる、と書かれています。
  • Robinhood(ロビンフッド)の欧州向けの「Classic Stock Tokens」:リトアニア中央銀行(Bank of Lithuania)の認可・規制を受けているRobinhood Europeの、欧州向けのページで紹介されている商品です。同社のページは、これを「ブロックチェーン上で記録され、米国の株などの値段に連動するデリバティブ」と説明しています。

ミサキが見た「1ドルから」に近い話は、実際に書かれています。xStocksは1米ドルから端数で買える、Classic Stock Tokensは1ユーロから始められる、と各社が説明しています。

ただ、少額で買えることと、株主になれることは、別の話です。 まず、2つの例の仕組みの違いから見ます。

2. 2つの型:元の株で「裏付けている」か、値段に「連動する契約」か

裏付け型:元の株を保管して裏付けている(Krakenの xStocks)

KrakenのFAQには、こうあります。

Each xStock is backed 1:1 by the underlying equity, held in regulated custody, and issued as an onchain token on Solana, Ethereum, TON, and Ink.

xStockの1つ1つは、元になる株式で1対1に裏付けられ、規制を受けた保管先に預けられ、ソラナ、イーサリアム、TON、Inkの上でトークンとして発行されます。(当校による訳)

トークンを発行しているのはBacked Assets (JE) Limitedという会社で、元の株はAlpaca Securities LLCが保管している、と同じFAQに書かれています。

契約型:値段が株価に連動する契約(Robinhoodの Classic Stock Tokens)

Robinhoodのページには、こうあります。

Classic Stock Tokens are derivative contracts between you and Robinhood. They are priced at the prices of the underlying securities without granting rights to them.

Classic Stock Tokensは、あなたとRobinhoodとの間のデリバティブ契約です。値段は元の証券の価格で決まりますが、元の証券への権利は与えられません。(当校による訳)

デリバティブは、ここでは「値段が株価に合わせて決まる、会社との契約」と読めば足ります。

Robinhoodも、元になる株などを米国の免許を持つ機関に保管しています。ただし、それは「Robinhoodが所有している」と書かれています。保管されていても、持ち主は利用者ではなくRobinhoodです。

契約型は、ページの最初から「権利は与えられません」と書いています。では、裏付け型はどうでしょうか。

3. 先に予想してください

元の株を1対1で保管しているxStocksなら、トークンを持つ人に議決権(株主総会で投票する権利)は付くでしょうか。

ア 付く
イ 付かない

決めてから、先へ進んでください。

答えはイ(付かない)です。KrakenのFAQには、こうあります。

xStocks do not confer shareholder rights like voting or dividends paid as cash.

xStocksは、議決権や、現金で支払われる配当のような、株主の権利を与えません。(当校による訳)

別の質問への答えでは、もっとはっきり書いています。

Holding xStocks is not the same as buying a share of the underlying company. xStocks provide exposure to the value of the stock but do not carry shareholder rights, voting rights, or any legal claim to the underlying company shares or residual assets in the event of the underlying company’s liquidation.

xStocksを持つことは、元の会社の株を買うことと同じではありません。xStocksは株の価値に連動する持ち方を提供しますが、株主の権利も議決権もなく、元の会社の株式や、その会社が清算されたときに残った財産を求める法的な権利もありません。(当校による訳)

元の株が保管されていても、その株の株主になるのはトークンを持つ人ではありませんでした。 契約型のRobinhoodも、同じページの質問と答えの所で「デリバティブなので、元の株などへの権利は一切与えない」と書いています。

これは2社だけの話ではなさそうです。Cointelegraphの2025年9月2日付の報道によると、EUの証券市場の当局ESMA(欧州証券市場監督局)の幹部Natasha Cazenave氏は、クロアチアでの会議で「こうしたトークン化された商品は、いつでも取引できることや小口に分けることを可能にする一方、通常は株主の権利を与えない」と述べ、直接の所有ではない形で作られている場合は、投資家が誤解する恐れがあると話しました。講演の原文は、当校は確かめられていません。

4. 2つの例を並べる

Kraken の xStocksRobinhood の Classic Stock Tokens
型元の株を1対1で保管して裏付ける利用者とRobinhoodの間のデリバティブ契約
元の株はどこに保管先のAlpaca Securitiesが保管(トークンの発行はBacked Assets)Robinhoodが所有し、米国の免許を持つ機関に保管
議決権など株主の権利付かない。「株を買うことと同じではない」付かない。「元の株への権利は一切ない」
配当の扱い現金では受け取らない(次の章)対象となる保有者は相当額を現金で受け取れるが、通常の意味の配当ではない(次の章)
ほかへ送れるか対応するウォレットへ引き出せる。従来の証券口座へは移せない今のところ、ほかのウォレットやサービスへは送れない
会社が破綻したときの説明KrakenやBackedが破綻しても、利用者がAlpacaに資産の価値を直接請求できるように設計した、と説明市場の状況やRobinhoodの破綻によって、投資した全額を失う可能性がある、と説明
日本から日本では利用できない、と明記欧州向けのページで紹介(日本から使えるかは当校は確かめていない)

「会社が破綻したときの説明」の行は、どちらが安全かを比べるためのものではありません。元の株を誰が持っているかで、説明の書き方そのものが違うことを見るための行です。

xStocksの「権利は無い」と「Alpacaに請求できる」は、矛盾していません。FAQによると、xStocksを持っても、元の株そのものへの法的な権利はありません。一方で、KrakenやBackedが破綻した場合は、資産の価値をAlpacaに直接請求できるように設計した、と説明しています。無いのは「株そのもの」への権利で、請求できると書かれているのは「資産の価値」です。

5. 配当は、「株主としての配当」ではありません

配当の扱いは、2つの例で逆に見えます。

xStocks(裏付け型):配当は現金では受け取りません。KrakenのFAQによると、元の会社が配当を出すと、トークンの発行元がその分で元の株を買い増し、持っているトークンの数に掛けて残高を表示するための倍率を引き上げます。FAQの例では、AAPLxというxStockを倍率1.0で1つ持っていて、0.1株分の配当が出ると、倍率が1.1になり、残高が1.1と表示される、と書かれています。計算に使うのは、米国の30%の源泉税を引いた後の配当です。

Classic Stock Tokens(デリバティブ型):Robinhoodのページによると、元の株などが配当を出すと、対象となる保有者に、相当する額を現金で渡します。ただし、利用者は元の株を持っていないので「通常の意味の配当ではない」とし、税の扱いが株の配当と違う場合がある、と書いています。

元の株で裏付けている裏付け型は現金を受け取らず、会社との契約の契約型は現金で相当額を受け取る。 そして、どちらも株主として受け取る配当ではありません。

「元の株を保管しているなら株主に近いはず」と考えると、3章の予想も、この配当の扱いも外れます。型から、何が手に入るかは推し量れないということです。だから、冒頭の2つ(型と、権利)は別々に確かめます。

6. 日本では

xStocksは、日本では使えません。 KrakenのFAQの冒頭に「xStocks not available in Japan.(xStocksは日本では利用できない)」とあります。このFAQは「Kraken Global」向けのページで、日本に住む人向けのサービスやお知らせは別のページを見るように、とも書かれています。

Robinhoodの Classic Stock Tokensは、欧州向けのページで紹介されている商品です。日本に住む人が使えるかどうかは、当校は確かめていません。

では、日本で「株をトークンにしたもの」は、どう呼ばれているのでしょうか。大和証券の金融・証券用語解説は、次のように説明しています。

金融商品取引法の対象となる「電子記録移転有価証券表示権利等」のうち、株や社債など同法第2条第2項柱書に規定されている有価証券表示権利をデジタル化したセキュリティトークンは「トークン化有価証券」として日本証券業協会が自主規制の対象としています。

かみくだくと、日本では、株や社債などの権利をデジタル化した「セキュリティトークン」は「トークン化有価証券」と呼ばれ、日本証券業協会の自主規制の対象になっている、ということです。

用語解説の言葉どおりに読むと、ここでいう「トークン化有価証券」は、株などの権利そのものをデジタルの形にしたもの、と説明されています。海外の2つの例は「株の値段に連動するが、株主の権利は付かない」と書いていました。同じ「トークン化」という言葉でも、何をトークンにしたのかの説明が違います。

ただし、これは証券会社の用語解説です。日本証券業協会の規則や金融庁の資料の原文は、当校は今回確かめられていません。 また、海外のxStocksやClassic Stock Tokensが、日本の法律でこの「トークン化有価証券」に当たるのかどうかも、確かめていません。「トークン化」という言葉が付いていれば同じもの、とは言えません。持ち帰っていただきたいのは、「トークン化」という言葉だけで中身を決めないことです。どんな権利が付くかは、日本の商品でも海外の商品でも、商品ごとの説明で確かめることになります。

7. 「トークン化株式」を見たら、確かめる2つ

発行元の説明を全部読む必要はありません。探すのは次の2か所です。

① 型:元の株で裏付けているのか、値段に連動する契約なのか
英語のページなら「backed 1:1(1対1で裏付け)」「custody(保管)」か、「derivative(デリバティブ)」「contract(契約)」のどちらが書いてあるか。あわせて、元の株を誰が持っていると書いてあるか。Robinhoodの例のように、株が保管されていても、持ち主が利用者とは限りません。

② 権利:株主の権利が付くのか
「shareholder rights(株主の権利)」「voting(議決権)」「dividends(配当)」の所。「not the same as buying a share(株を買うことと同じではない)」「do not grant any rights(権利を与えない)」のように書いていないか。

今回の2つの例では、どちらもFAQや商品ページの質問と答えの所に書かれていました。Robinhoodは、ページの冒頭と最後の注意書きにも同じことを書いています。

もう1つ。日本から使えるかどうかも、ページの冒頭や利用できる国の説明で確かめてください。xStocksのように、日本では使えないと書いてある例があります。

8. この記事で言えないこと

  • 「トークン化株式は、どれも株主の権利が付かない」とは言えません。 当校が確かめたのは2つの例だけです。ESMAの幹部の発言も「通常は」で、報道で確かめた範囲です。
  • 日本証券業協会の規則・金融庁の資料の原文は、確かめていません。 日本での呼び方は、大和証券の用語解説によるものです。
  • 海外のトークンが日本の法律でどれに当たるか、日本に住む人がRobinhoodの Classic Stock Tokensを使えるかは、確かめていません。
  • Robinhoodのほかのトークンの仕組みは、確かめていません。 この記事で扱ったのは、同社のページで「Classic Stock Tokens」と呼ばれているものだけです。
  • xStocksやClassic Stock Tokensが安全かどうか、手を出してよいかどうかについて、この記事は何も判断しません。 Krakenは「リスクがある」と書き、Robinhoodは「投資した全額を失う可能性がある」と書いています。価格の見通しも示しません。

塾長とミサキ(続き)

夜になって、ミサキからもう一通届いた。

ミサキミサキ
「発行元のページ、自分でも開いてみました。前に暗号資産の置き場所を考えたときのメモに『置き場所=誰に預けるか』って書いてあって、その下に一行足しました。『株のトークン=元の株は誰が持っているか』」
塾長塾長
「いい一行だ」
ミサキミサキ
「元の株を持ってる会社が違うと、会社がつぶれたときの書き方も違ってて。……暗号資産を取引所に置いておくのも、これと同じ話ですか」
塾長塾長
「同じ問いだな。自分が持っているのか、預けた先が持っているのか。置き場所のメモと、つなげて読み直してみるといい」

今日できること

次に「トークン化株式」「株のトークン」という言葉を見たら、その商品の発行元のFAQを開いて、「rights(権利)」という言葉を探してください。見つかった文が「付く」と書いているのか「付かない」と書いているのかを読むだけで、7章の②が確かめられます。

次に読む

「誰に預けているか」で何が変わるのかは、連載の第8話で、ミサキが暗号資産の置き場所として確かめています。

この記事の一次情報と確認日

確認日:2026年10月21日

一次情報

  • Kraken Support「xStocks frequently asked questions」(ページの更新日:2026年9月18日):実在する米国株・ETFをトークンで表したもの、1対1の裏付けと保管、発行するブロックチェーン、1米ドルから端数で買えること、発行元(Backed Assets (JE) Limited)と保管先(Alpaca Securities LLC)、株主の権利(議決権・現金の配当)が付かないこと、株を買うことと同じではないこと、配当を倍率で反映する仕組みと例、ウォレットへの引き出しと証券口座へ移せないこと、破綻したときの仕組みの説明、日本では利用できないこと、日本に住む人向けの情報は別のページであること。
  • Robinhood EU「Build your Portfolio with Classic Stock Tokens」:Classic Stock Tokensが利用者とRobinhoodの間のデリバティブ契約であること、ブロックチェーンで記録され株・ETPの値段に連動すること、元の証券への権利を与えないこと、1ユーロから始められること、元の資産をRobinhoodが所有し米国の免許を持つ機関に保管すること、配当に相当する額を現金で渡すが通常の意味の配当ではないこと、ほかのウォレットへ送れないこと、市場の状況やRobinhoodの破綻で全額を失う可能性、Robinhood Europe, UABがリトアニア中央銀行の認可・規制を受けていること。
  • 大和証券「金融・証券用語解説[トークン化有価証券]」:株や社債などの有価証券表示権利をデジタル化したセキュリティトークンが「トークン化有価証券」として日本証券業協会の自主規制の対象であること。(証券会社による用語解説です)

二次情報(報道)

この記事が確認していないことは、8章にまとめています。

この記事は情報提供のみを目的としており、特定の銘柄や商品の売買、特定の取引所・サービスへの登録を勧めるものではありません。価格の見通しは示していません。

連載「ミサキの0からクリプト」

暗号資産をまだ買ったことのない会社員のミサキが、塾長に質問しながら一つずつ確かめていく連載です。第0話から読む →

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