
「ビットコインのETFから◯億ドルの流出」「ETFへの流入」。こうした言葉を見て、気になったことはありませんか。ビットコインのETFを買えば、ビットコインを持つのと同じことになるのでしょうか。日本の証券会社でも買えるのでしょうか。
先に、この記事の答えを1つだけ書きます。
米国の商品の例で見ると、ビットコインETFは、ビットコインの価格の動きを反映することを目指し、証券取引所で売買される商品です。ビットコインを直接持つときの保管の手間を省く形になっていて、買った人が持つのは、ビットコインそのものではなく、ETFの持ち分(この記事では「口(くち)」と呼びます)です。手数料の払われ方も、直接持つ場合とは違います。そして今の日本では、暗号資産のETFを国内で作ることも売ることも認められていません(金融庁)。日本の証券会社の口座から米国の商品を買えるかどうかは、当校は各社の案内で確かめていないので、この記事では「買える」とも「買えない」とも書きません。
日本取引所グループ(JPX)、米国のBlackRock(ブラックロック)グループのiShares(アイシェアーズ)の商品ページ、金融庁の公表資料を、原文で確かめながら進めます。どれも記事の最後にリンクを置いています。
※ 情報提供のみを目的としています。特定の商品・証券会社・取引所の利用や、暗号資産・ETFの売買は勧めません。価格の予想もしません。確かめられなかったことは、記事の後半にまとめています。
目次
塾長とミサキ
日曜の朝、映画館のロビー。開場まで、あと二十分ある。ミサキはポップコーンの列から外れて壁ぎわの椅子に座り、月曜から開いたままだった週間まとめを、やっと読み始めた。
ETFという言葉が、また出てきた。ミサキは、そのすぐ後のかっこ書きを指でなぞった。証券会社の口座でビットコインに投資できる、上場投資信託、とある。
ミサキは、塾長にメッセージを送った。
ミサキ
ミサキ
塾長
塾長ミサキは返事を打つ前に、かっこの中をもう一度ゆっくり読んだ。
ミサキ
ミサキ
塾長
ミサキロビーに、開場のアナウンスが流れた。
1. そもそもETFとは
日本取引所グループ(JPX)は、ETFの特徴の説明で、ETFを大きく2種類に分けています。
ETFは、大まかに分けると、TOPIX(東証株価指数)やJPX日経インデックス400といった株価指数、金価格などの指標に連動するインデックス連動型ETFと、連動対象指標が存在しないアクティブ運用型ETFの2種類が存在します。
ETFには、株価指数や金価格のような「指標」に連動するように作られているものがある、ということです。
ビットコインETFは、この「連動する指標」がビットコインの価格になっているもの、と考えると入りやすくなります。ここからは、実際の商品の説明で確かめます。
2. ビットコインETFとは:1本の商品ページで確かめる
ここでは例として、BlackRockグループのiSharesの「iShares Bitcoin Trust ETF」(略称IBIT)の商品ページを読みます。米国で売買されている現物のビットコインETFの1つです。他の商品も同じかどうかは、この記事では確かめていません。また、この商品を勧めるものではありません。
商品ページの冒頭には、こう書かれています。
The iShares Bitcoin Trust ETF seeks to reflect the performance of the price of bitcoin. The Trust offers exposure to bitcoin through an exchange-traded product, simplifying the operational and custody complexities of holding bitcoin directly.
日本語にすると、次の2つです。
- ビットコインの価格の動きを反映することを目指している。
- 取引所で売買される商品を通じて、ビットコインの値動きに関われるようにする。ビットコインを直接持つときの、運用や保管の手間を省く形で。
同じページには、次の表示もあります(2026年10月22日に確認)。
| 項目 | 商品ページの表示 |
|---|---|
| 売買される取引所(Exchange) | NASDAQ |
| 手数料(Sponsor Fee) | 0.25% |
また、保有の欄の「quantity」(数量)は、このETFが持っているビットコインの総数だ、という説明もあります。箱の中には、実際にビットコインが入っています。
冒頭のミサキは、週間まとめのかっこ書きから「投資信託=詰め合わせ」を思い出し、「箱の方を持つのでは」と考えました。箱の中にビットコインがあり、買った人は箱の持ち分(口)を持つ、という見方は、この商品にも当てはまります。英語のページでは、この持ち分を「shares」と書いています。
ただし、IBITの商品ページには英語で、こんな注意書きもあります。IBITは、米国の「1940年投資会社法」に登録した投資会社ではないので、その法律に登録した投資信託やETFと同じ規制は受けない、というものです。同じETFという名前でも、箱の作りや決まりは商品ごとに違うことがあります。名前だけで同じものと決めず、商品ページの注意書きまで読んで、どんな決まりの下の商品かを確かめるのが確実です。
3. 予想してください:手数料は、どこから払われる?
IBITの商品ページの「Sponsor Fee」の欄には、0.25%と表示されていました。この手数料は、どうやって払われるでしょうか。
① ETFを持っている人に、手数料の請求が来る(口座から引き落とされる)
② ETFの箱の中のビットコインを売って、払う
決めてから、先へ進んでください。
答えは、同じ商品ページのリスクの説明に書かれています。
The amount of bitcoin represented by shares of the Trust will decrease over the life of the Trust due to sales of bitcoin necessary to pay the sponsor’s fee and trust expenses.
答えは②です。手数料や経費を払うために、箱の中のビットコインが売られます。そのため、ETFの1口が表すビットコインの量は、時間とともに減っていきます。
この文には続きがあり、ビットコインの値上がりがこの減り分を埋めるほどでなければ、ETFの口の値段も下がり、投資した人は損をする、とまで書かれています。
ここからは当校の見方です。手数料が請求の形で届くわけではないので、持っている人は、払っていることに気づきにくいかもしれません。払っていないのではなく、箱の中身が少しずつ減る形で払っています。
4. ビットコインを直接持つのと、何が違うか
ここまでをIBITの例でまとめます。
| ビットコインを直接持つ | ビットコインETFを持つ(IBITの例) | |
|---|---|---|
| 持っているもの | ビットコインそのもの | ETFの口。ビットコインは箱(運用する側)が持っている |
| 保管・管理 | 運用や保管の手間を、持つ人が負う(IBITのページは、ETFはこの手間を省く形だと説明している) | 直接持つときの手間を省く形で、ビットコインは箱の側が持つ。ただし箱のビットコインがなくなったり傷ついたりして取り戻せないときは、口の値打ちが下がると書かれている |
| 運用の手数料 | ETFの手数料はかからない(取引所などの手数料は、使う所の案内で確かめる) | 箱の中のビットコインを売って払う。1口が表すビットコインの量は減っていく |
| 値段 | ビットコインの価格そのもの | 箱のビットコインの時価から経費などを引いた値打ちを反映するように作られている。市場で売れる値段は、それとずれることがある |
表の右の列の「保管」と「値段」は、どちらもIBITの商品ページのリスクの説明に書かれていることです。当校の言い方にすると、保管の手間は消えるのではなく、箱の側に移っています。そして、手数料や経費は箱の中身から払われます。
5. 日本から買えるのか
国内では、作ることも売ることも認められていない
金融庁は2025年10月31日、「金融商品取引業等に関するQ&A」に問6を足し、考え方を公表しました。その発表の本文です。
海外で組成された暗号資産ETFを原資産とするデリバティブ商品の取扱いについては、暗号資産ETFの国内における組成・販売が認められていない状況を踏まえると、投資者保護上の懸念があることから、望ましくないと考えている
ここから分かることは2つです。
- 暗号資産のETFは、日本国内で作ること(組成)も、売ること(販売)も認められていない。
- 海外で作られた暗号資産ETFの値動きをもとにした別の金融商品(デリバティブ)を扱うことも、金融庁は「望ましくない」と考えている。
冒頭のミサキは「証券会社の口座で、株みたいに買える」と考えました。けれど、2章で見たIBITは、米国で売買されている商品です。
ここで、確かめられたことと、確かめられていないことを分けておきます。
- 確かめられたこと:暗号資産のETFを日本国内で作ることも売ることも、認められていない(金融庁)。
- 確かめられていないこと:日本の証券会社の口座から、米国で売買されているIBITのような商品を買えるかどうか。各社の公式の案内を、当校は確かめていません。
ですから、この記事は「日本からは買えない」とも「買える」とも書きません。気になる人は、使っている証券会社の、取り扱っている外国のETFの一覧や案内で確かめてください。
2026年7月の法改正は、「解禁」とは書かれていない
金融庁の「国会提出法案等」のページによると、「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」は、2026年4月10日に国会に出され、7月15日に成立しました。ページの説明は、次のとおりです。
「暗号資産」、「サステナビリティ情報の開示・保証」、「スタートアップへの資金供給」、「不公正取引規制」等に関する制度を整備
暗号資産の制度を整える改正ですが、このページの説明に、暗号資産ETFを認めるという言葉はありません。当校は、この改正で国内のETFが認められた、とは書きません。
民間の見方も1つ紹介します。暗号資産のリサーチをしている企業エックスウィンは、改正法の成立後の記事(NADA NEWS、2026年7月17日)で、こう書いています。
もちろん、この法改正だけで現物ETFが承認されるわけではありません。
これは企業の見方で、金融庁の発表ではありません。国内で暗号資産ETFがいつ認められるのかは、当校は公式の決定を確かめられていません(7章)。
6. 週間まとめの「ETFの流出・流入」は、何の話か
「ETFからの流出」「ETFへの流入」という数字を見たら、まずどこの国で売買されている、どの商品の数字かを確かめてください。
IBITのような米国の現物ETFの数字なら、この記事で見たとおり、箱の中にビットコインを持ち、買った人は箱の口を持つ商品の話です。そして、日本国内では暗号資産のETFを作ることも売ることも認められていません。「日本の自分が今買える商品の話」と決めつけず、「米国の、ビットコインを入れた箱の話」として読むと、取り違えずに済みます。
7. この記事で言えないこと
- 国内で暗号資産ETFが認められる時期。 金融庁の公式な決定は確認できませんでした。
- 暗号資産ETFがNISAの対象になるかどうか。 公式の決定は確認できませんでした。
- 2026年7月に成立した改正法がいつから効力を持つか(施行日)。 金融庁のページで確かめたのは、成立した日だけです。
- 暗号資産やETFの税金の扱いが、この先どう変わるか。 決まったことは確認できませんでした。
- 日本の証券会社の口座から、米国のビットコインETFを買えるかどうか。 5章のとおり、各社の公式の案内は確かめていません。
- IBIT以外のビットコインETFの手数料や仕組み。 IBITの商品ページだけを読みました。
- IBITの手数料0.25%が、どの期間あたりの率で、どう計算されるか。 商品ページの表示は「Fees as stated in the prospectus(目論見書に記載の手数料)」で、当校は目論見書(商品の説明書)を読んでいません。
- 米国で現物のビットコインETFが認められた日と本数。 一次情報で確かめていません。
- ビットコインやETFの値段がこの先どうなるか。 この記事は扱いません。
塾長とミサキ(続き)
映画が終わって、ロビーの明かりの下で、ミサキは続きを最後まで読んだ。
ミサキ
塾長
ミサキ
塾長ミサキはスマートフォンのメモに一行打った。「ETF=ビットコインを持つのは箱の側」。家に帰ったら、図書館のノートの「置き場所=誰に預けるか」の下に書き写すつもりだ。
今日できること
次に週間まとめを開いたら、ETFの段落を読む前に、「どこの国の、どの商品の話か」「中身はビットコイン、持つのは口」の2つを思い出してください。
メモに残すなら、この1行で足ります。
- ビットコインETF(IBITの例):中身はビットコイン、買う人が持つのは口。手数料は中身を売って払う。暗号資産のETFは、日本国内で作ることも売ることも認められていない(2026年10月22日に確認)。
次に読む
ETFでは箱の側が持っているビットコインを、自分で持つときは、誰に預けるのか。ミサキがノートに「置き場所=誰に預けるか」と書いたのは、連載の第8話です。銀行の預金と、暗号資産の会社に置いたものの守られ方の違いを、一緒に確かめています。
ETFの数字を、この記事の見方で読んでみるなら、週間まとめへ。
この記事の一次情報と確認日
確認日:2026年10月22日
一次情報
- 日本取引所グループ「ETFの特徴」:ETFにはインデックス連動型とアクティブ運用型の2種類があること。
- BlackRock / iShares「iShares Bitcoin Trust ETF(IBIT)」商品ページ:ビットコインの価格の動きの反映を目指すこと、取引所で売買される商品を通じて直接持つときの運用・保管の手間を省くこと、取引所NASDAQ・Sponsor Fee 0.25%、quantity はETFが持つビットコインの総数であること、1940年投資会社法に登録した投資会社ではないこと、手数料と経費の支払いのためにビットコインが売られ1口が表すビットコインの量が減ること、口の値段は箱のビットコインの時価から経費などを引いた値打ちを反映するよう作られているが売買の値段はそれと違うことがあること、箱のビットコインが失われ取り戻せない場合に口の値打ちが下がること。
- 金融庁「『金融商品取引業等に関するQ&A』の改訂について」(2025年10月31日):暗号資産ETFの国内での組成・販売が認められていない状況を踏まえ、海外で組成された暗号資産ETFを原資産とするデリバティブ商品の取扱いは望ましくないと考えていること。
- 金融庁「国会提出法案等」:金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律が2026年4月10日に提出され、7月15日に成立したこと、その説明。
二次情報(企業の発表記事)
- NADA NEWS「日本の暗号資産市場は新たな時代へ──金商法改正が示すETFへのロードマップ【エックスウィン】」(2026年7月17日):この法改正だけで現物ETFが承認されるわけではない、という企業の見方。
この記事が確認していないことは、7章にまとめています。
この記事は情報提供のみを目的としており、特定の商品・証券会社・取引所の利用や、暗号資産・ETFの売買を勧めるものではありません。
連載「ミサキの0からクリプト」
暗号資産をまだ買ったことのない会社員のミサキが、塾長に質問しながら一つずつ確かめていく連載です。第0話から読む →








