ミサキの0からクリプト|第9話
塾長(黒田慎吾)プロフィールを見る
ビットコイン予備校の運営者兼相談役。
Web事業運営とクリプト実務を経験し、目立つ数字や高利回りを先に見て出口確認が遅れた自身の失敗を、初心者に繰り返させないために相談に乗っている。答えを急がせず、ミサキが自分で確認質問を作れるように、順番を整えることを大事にしている。
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資産運用を学び始めた会社員。
NISAなどはすでに始めているが、暗号資産は未購入・未経験。分からないことをそのまま質問できる一方、大きな数字を先に比較してしまう癖がある。塾長とは初心者向けの勉強会で知り合って数か月になる。
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画面を押すと閉じます第8話で「預けるだけで年利10%」のページを見つけたミサキが、翌日の仕事帰り、塾長と待ち合わせた駅前のファミレスの場面です。
「銀行の金利と、ケタが違うんです」。スマートフォンを差し出したミサキに、塾長はいつもより少ない言葉で答えます。

晩秋の水曜の夜。駅前のファミレスは、仕事帰りの客でほどよくざわついている。
先に来ていた塾長は、ドリンクバーのコーヒーを前に、窓際の席で待っていた。
ミサキ昨日のページ、これです。
「預けるだけで年利10%」。
10万円なら、1年で1万円……って、つい計算しちゃいました
ミサキでも、昨日「守られ方」を調べたばかりなので。
半分くらいは、あやしいと思ってます
塾長は画面をしばらく見て、何も言わずにカップを置いた。
塾長……昔、似た画面を見たことがある。
数字の大きいほうばかり見て、お金がどこに行くのか、いつ出せるのかを確かめたのは、入れたあとだった
ミサキ……塾長が、ですか
塾長あとは、だいたい想像どおりだ。
だから今は、数字の前に3つだけ聞くことにしてる
塾長運用するのは誰か。
利回りの源泉は何か。
いつ出せるか
ミサキげんせん……って、税金の話じゃないですよね?
塾長悪い。
その10%が、どこから払われるのか、だ
ミサキはページを一番下までスクロールし、もう一度上から読み直した。
ミサキ会社の名前は英語だけで、どこの会社か分かりません。
増える理由は「独自の運用」としか。
引き出すときのことは……どこにもないです
ミサキ大きく書いてあるのは、10%だけなんだ……
塾長3つとも、答えが書いてないな。
それが分かれば、今日は十分だ
ミサキはノートを開き、昨日の「置き場所=誰に預けるか」の下に、3つの質問を書き写した。
目次
「年利◯%」を見たら、数字の前に3つを確かめる
・高い利回りをうたう話で、数字より先に確かめる3つのこと
・暗号資産の投資話で、実際に起きているトラブルの例
・困ったときの相談先
「預けるだけで年利◯%」のような話を見たときは、利回りの数字を比べる前に、次の3つに答えられるかを確かめる。
- 運用するのは誰か:会社の名前、所在地、連絡先が分かるか。暗号資産の売り買いなどを行う会社には、金融庁・財務局への登録が必要で、登録の有無は金融庁のページで調べられる。
- 利益はどこから来るのか:払われるお金が、何から生まれるのかが説明されているか。「独自の運用」「AIが運用」のような言葉だけでは、説明になっていない。
- いつ、どうやって引き出せるのか:出金の方法、かかる日数、手数料、引き出せない期間の決まりが書かれているか。
3つのうち一つでも答えが見つからないなら、その時点でお金を入れる前に止まる理由になる。
政府広報オンラインでは、金融庁・消費者庁・警察庁の資料をもとに、暗号資産をめぐるトラブルの例を紹介している。たとえば次のようなものだ。
- 人を紹介すると紹介料がもらえると聞いて加入したが、出金が止められて、お金が引き出せない。
- 出金するために、追加の支払いが必要だと言われた。
- 海外の業者に投資したが、ホームページから出金できなくなり、ページも閉じられた。国内の窓口の名前や連絡先も分からない。
3つとも、お金を入れたあとに「引き出せない」と分かった例だ。「必ず値上がりする」「絶対もうかる」「楽して稼げる」「今がチャンス」といった言葉には注意し、内容とリスクが十分に分からなければ契約しないよう、政府広報オンラインも呼びかけている。
あやしいと思ったら、一人で決めずに相談できる。暗号資産を含む金融サービスについては金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)、不審な勧誘やトラブルについては消費者ホットライン(188)が窓口になっている。
店を出ると、風がすっかり冷たくなっていた。駅までの道で、ミサキが口を開いた。
ミサキ塾長。
うちの母も、昔……
塾長うん
ミサキ……いえ。
今日は、やめておきます
塾長は「そうか」とだけ言って、それ以上は聞かなかった。改札の前で別れたあと、ミサキはしばらくスマートフォンの母の名前を見ていた。
ミサキ、母のことを話す
次は、晩秋の夜の自宅。言いかけてやめた話を、ミサキが塾長へのメッセージに書きはじめます。
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