ミサキの0からクリプト|第21話
塾長(黒田慎吾)プロフィールを見る
ビットコイン予備校の運営者兼相談役。
Web事業運営とクリプト実務を経験し、目立つ数字や高利回りを先に見て出口確認が遅れた自身の失敗を、初心者に繰り返させないために相談に乗っている。答えを急がせず、ミサキが自分で確認質問を作れるように、順番を整えることを大事にしている。
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資産運用を学び始めた会社員。
NISAなどはすでに始めているが、暗号資産は未購入・未経験。分からないことをそのまま質問できる一方、大きな数字を先に比較してしまう癖がある。塾長とは初心者向けの勉強会で知り合って数か月になる。
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画面を押すと閉じます第20話で、旅行の見積もりから「1ドル155円」を計算し、帰りのホームでニュースの数字がそれと違うことに気づいたミサキが、翌日の月曜の朝、通勤電車の中で、塾長にチャットで聞く場面です。
「どっちが、本当の1ドルなんでしょう」。見積もりの155円と、ニュースの152円40銭。塾長の一問で、ミサキは二つの数字の出どころを確かめます。

晩秋の月曜の朝。ミサキは、混んだ通勤電車でつり革につかまっていた。
コートの中が少し暑い。バッグの中には、昨日もらった旅行の見積もりの紙が、四つに折ったまま入っている。
片手でニュースアプリを開く。為替の欄に「1ドル=152円40銭」。
昨日、電卓で出したのは155円だった。ひと晩たっても、どちらを信じればいいのか分からないままだ。
少し迷ってから、塾長にメッセージを送った。
ミサキ塾長、朝からすみません。
旅行の見積もりで、ホテル代が1ドル155円で計算されてたんです。
でも、ニュースだと152円40銭で
ミサキどっちが、本当の1ドルなんでしょう
次の駅でドアが開いて、閉まった。返事が来た。
塾長おはよう。
どっちが本当か決める前に、一つだけ。
そのニュースの数字は、誰と誰がお金を交換したときの値段だと思う?
ミサキ誰と誰……。
考えたこともなかったです。
空港の両替所とか、ですか
塾長両替所は、どちらかといえば反対側だな。
ニュースの円相場は、ふつうインターバンク取引の相場で、対顧客取引の相場とは別物だ
ミサキ塾長、満員電車で読むには、むずかしい言葉が多すぎます
塾長悪い、言い直す。
ニュースの数字は、ふつうは銀行どうしがお金を交換するときの値段だ。
日銀のページに書いてあるから、一緒に見よう
送られてきたリンクを開く。「教えて!にちぎん」という題の下に、ニュースで報じられる相場は、ふつう「インターバンク取引」の相場だと書いてあった。
その下に、個人が銀行で両替するときなどの相場は、「いわば小売り段階のもの」で、それとは異なる、とある。
ミサキ銀行どうしの値段と、私たちが両替するときの値段は、別なんですね。
市場で仕入れる値段と、お店に並ぶ値段みたいな
塾長そんな感じだ。
もう一つ。
ニュースの画面、今もう一回開いてみて
言われるまま、ニュースアプリに戻って画面を下に引く。数字が、くるりと入れ替わった。
「1ドル=152円46銭」。
ミサキあれ、さっきと変わってます。
6銭だけですけど
塾長その数字は、一日の中でも動いてる。
だから、いつの数字かも一緒に見る
ミサキじゃあ、見積もりの155円は、どこの、いつの数字なんですか
塾長旅行会社が、見積もりを作るときに使った数字だ。
どう決めたかは、俺にも分からない。
見積もりを出した店に聞くのが、いちばん早い
電車が揺れて、ミサキはつり革を握り直した。画面の152円46銭と、バッグの中の紙の155円。
昨日は、この二つのどちらかが間違っているんだと思っていた。
ミサキどっちかが間違い、じゃなくて、同じ種類の数字かどうかを、先に見るんだ。
誰の、いつの数字か。
比べる前に、そこを見るんですね
少し間があって、もう一通届いた。
塾長朝から相場(そうば)っかり見て、降りる駅を乗り過ごすなよ
ミサキ……今のは、円安より安いです
塾長……
ミサキ……隣の人に見られるので、笑うのは降りてからにします
会社の最寄り駅で降りる。改札へ向かいながら、今日の昼休みに旅行会社へ電話して、見積もりの「1ドル」をどう決めたのか聞いてみようと決めた。
帰ったら、メモ帳の「0.大きい数字から比べない」の横に、一行足しておこう。「誰の、いつの数字か」。
見積もりのホテル代は、去年より9,000円高かった。何の数字で計算したのかは、まだ分からない。それでも、海外から来るほかの物はどうなんだろう。
毎日の買い物も、知らないうちに高くなっているんだろうか。
目次
為替レートの読み方 「1ドル=○円○銭」は、誰の、いつの数字か
・「1ドル=152円40銭」のような為替レートの読み方
・ニュースの為替相場と、両替などで使う相場がちがう理由
・為替相場は、同じ日の中でも動くこと
この記事は、為替の先行きを予想したり、外貨や特定の商品・サービスをすすめたりするものではない。また、物語の「1ドル=152円40銭」「152円46銭」と、見積もりの「1ドル155円」は、しくみを説明するための仮の数字で、実際の相場とは関係ない。
まず、数字の読み方から。「1ドル=152円40銭」は、1ドルに替えるのに152円40銭が要る、という意味だ。銭(せん)は円より小さい単位で、法律で「円の百分の一」と決められている。つまり152円40銭は、152.40円のことだ。
ニュースでは、この数字が前の日と比べてどう動いたかも伝えられる。日本銀行は、その例として「1ドル=○○円××銭と、前日に比べて△△銭の円高ドル安でした」という言い方を挙げている。
ここで、予想してみてほしい。前の日に1ドル=152円40銭だった相場が、今日は152円90銭になった。これは円高だろうか、円安だろうか。
答えは、50銭の円安だ。1ドルに替えるのに要る円が、50銭増えた。それだけ円の価値が下がったことになる。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の用語集も、1ドル=100円が1ドル=110円になれば、円の価値が下がったので「円安」と呼ぶ、と説明している。
次に、ミサキが迷った「どっちが本当か」。日本銀行によると、ニュースで報じられる為替相場は、ふつうインターバンク取引の相場だ。これに対して、個人が銀行で小口の両替や外貨預金をするときの「対顧客取引」の相場は、いわば小売り段階のもので、インターバンク取引の相場とは異なる。
さらに、為替相場は同じ日の中でも動く。日本銀行は毎営業日、ドルと円の朝9時と夕方5時の時点の相場を「外国為替市況」として公表している。そこには、その日に実際に取引された値段のうち、いちばん高い値段と安い値段も載っている。ニュースの「1ドル=○円」を見たら、いつの数字かも一緒に見ておきたい。
ミサキの見積もりの紙には、その「1ドル155円」がいつの、どんな相場なのかは書いていなかった。気になるときは、見積もりを出したところに聞いてみるとよい。
まとめると、「1ドル=○円」を見たら、比べる前に次の3つを見ておきたい。
- 誰と誰の取引の数字か(銀行どうしか、個人の両替などか)
- いつの数字か(同じ日でも、時刻によって動く)
- 比べる二つの数字は、同じ種類か
個人の両替などの相場が、ニュースの相場とどのくらい、なぜちがうのかは、この先の話で確かめる。
ミサキ、値上がりに気づく
次は、スーパーにて。円安で高くなるのは、旅行だけなのか。いつもの買い物の途中で、ミサキはある値段に目を止めます。
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