
「バイナンスで約1兆円の暗号資産流出」。こうした見出しを見て、自分のお金は大丈夫なのか、取引所に預けると消えることがあるのか、と調べに来た人に向けた記事です。
先に、この記事が渡すことを1つだけ書きます。
流出の報道を見たら、まず「ニュースに出ている会社」と「自分の口座の会社」を分けます。海外のバイナンス(Binanceグローバル)なのか、日本で登録を受けたBinance Japanなのか。そのうえで、自分が使っている会社の公式のお知らせで、①預かり資産の保管場所、②出庫(出金)の状況、③補償の方針、の3つを確かめます。
根拠にしたのは、Binance Japanが2026年10月30日に出したお知らせと、金融庁の利用者向けのページです。流出そのものの規模や時刻は、国内の報道(CoinPost・NADA NEWS)が伝えた内容を、出典を分けて使います。どれも記事の最後にリンクを置いています。
※ 情報提供のみを目的としています。特定の取引所を勧めたり、比べたりするものではありません。価格への影響や売買の判断、攻撃の手口の細部は扱いません。
目次
塾長とミサキ
日曜の朝。近所のコインランドリーで、乾燥機の残り時間が「24分」になったのを見てから、ミサキはベンチでニュースアプリを開いた。いちばん上の見出しに「約1兆円」とある。二度読んで、塾長に電話をかけた。
ミサキ
塾長
ミサキ乾燥機の回る音を聞きながら「バイナンス 日本」で検索すると、ニュースのすぐ下に、会社のお知らせが出てきた。
ミサキ
塾長
ミサキ
塾長
ミサキ1. 何が起きたか:報道で分かっていること
まず、流出そのものについてです。バイナンス(グローバル)の公式の発表は、当校では本文の写しを保存できませんでした。そのため、この章の数字と時刻は、国内の報道が伝えた内容です(どの報道によるものかを、その都度書きます)。
- いつ:CoinPost(10月31日)によると、日本時間の10月30日午前5時5分ごろ、バイナンスのホットウォレットが侵害されました。Binance Japanのお知らせも、この件を「日本時間2026年10月30日未明に確認されたBinanceグローバルにおけるセキュリティ事案」と書いています。
- どれだけ:CoinPostによると、約63億ドル相当のトークンが流出し、対象にはビットコイン、イーサリアム、ステーブルコインのUSDC・USDTなどが含まれます。NADA NEWSは、複数のホットウォレットから約63億ドル、日本円で9928億円相当が流出したと伝えています。
- その後:CoinPostによると、バイナンスは出金サービスを一時停止し、安全確認の完了を条件に、段階的に再開を始める目標を示しています。また、損失を利用者ではなく同社が負担するとして、63億4000万ドル超(約1兆円)の自社資金を補償に確保したと31日に明らかにしました。補償にはユーザー保護基金(SAFU)と自社の財務資金を充てる方針だといいます。
- 原因:調べが続いていて、確定した発表はこの記事では確かめられていません(5章)。
見出しの「約1兆円」は、2つの数字に使われている
見出しを読むときに、1つ気を付けたいことがあります(当校の読みです)。
| 何の金額か | 報道の数字 |
|---|---|
| 流出した額 | 約63億ドル(NADA NEWSは約9928億円相当と換算) |
| 補償のために確保した額 | 63億4000万ドル超(CoinPostは約1兆円と換算) |
どちらも「約1兆円」と書かれることがあります。NADA NEWSの記事の題には「約1兆円の暗号資産流出」、CoinPostの記事の題には「補償に約1兆円を確保」とあります。大きな数字だけを先に読むと、何の1兆円なのかを取り違えやすくなります。
2. 「ホットウォレット」と「コールドウォレット」:発表の言葉で読む
今回の報道とお知らせには、「ホットウォレット」と「コールドウォレット」という2つの言葉が出てきます。どちらも、暗号資産の置き場所(ウォレット)の言い方です。
流出したのは、ホットウォレットの方です。CoinPostは、米国のジャーナリストのエレノア・テレット氏の話として、流出はバイナンスが管理する「オンライン接続型のホットウォレット」にあったもので、バイナンスの広報担当者は顧客資金は影響を受けていないと説明した、と伝えています。同じ記事で、テレット氏は、補填資金がなければ一部の顧客の回収額が減る可能性もあった、とも解説しています。「影響を受けていない」は、補償の資金を会社が出すことを前提にした説明として読むのが安全です(当校の読みです)。
一方、Binance Japanのお知らせには、こう書かれています。
当社がお客様からお預かりしている暗号資産は、本邦法令の定めに従い、当社のコールドウォレットで管理しています。今回のセキュリティ事案の対象となっているBinanceグローバルのホットウォレットとは別で管理されており、本事案の影響は確認されませんでした。
並べると、次のようになります。
| どの会社の | どの置き場所 | 発表・報道の言い方 | |
|---|---|---|---|
| 流出した所 | Binanceグローバル | ホットウォレット | 「オンライン接続型のホットウォレット」(CoinPostが伝えたテレット氏の話) |
| Binance Japanの利用者の暗号資産 | Binance Japan | Binance Japanのコールドウォレット | 「本邦法令の定めに従い、当社のコールドウォレットで管理」「Binanceグローバルのホットウォレットとは別で管理」(Binance Japanのお知らせ) |
置き場所の名前だけで、安心しきらない
ただし、Binance Japanのお知らせは、コールドウォレットがどういう仕組みなのかまでは書いていません。また、「コールドウォレットなら何も起きない」とも書いていません。
もう1つ、流出とは別の種類のリスクも、同じお知らせに書かれています。お知らせの最後には、会社としての注意書きが並んでいて、その8番目は、こうです。
当社はお客さまの資産を当社の資産とは分別して管理しておりますが、当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
日本で登録を受けた会社でも、会社自身がこう書いています。「国内の会社なら」「コールドウォレットなら」と、置き場所や会社の種類の名前だけで安心しきらず、その会社が今、何を発表しているかを見ることが大事です(当校の考えです)。
3. 海外のバイナンスと、日本のBinance Japan
場面のミサキが気付いたように、名前に「バイナンス」と付く会社は1つではありません。今回のニュースの「バイナンス」は、Binance Japanのお知らせの言い方では「Binanceグローバル」です。
Binance Japanは、お知らせの一番下に、自社をこう書いています。
Binance Japan株式会社
暗号資産交換業者 関東財務局長 第00031号
場面で塾長が言った「日本の登録番号」は、この行のことです。番号が本当に登録されたものかは、下の金融庁の一覧で確かめられます。
日本では、交換業者は登録が必要
金融庁は、利用者向けのページでこう案内しています。
・暗号資産交換業者は登録が必要です。利用する際は登録を受けた事業者か確認してください。
金融庁の別のページによると、登録にあたっては、預かった資産の分別管理、トラブルのときの対応窓口、システムを安全に動かすための管理など、利用者を守るための態勢を整えることが求められます。登録を受けていない業者については、その態勢を当局が確認できず、出金を断られる、法外な出金手数料を求められる、急に連絡が取れなくなる、といったトラブルの声が多く寄せられている、と書かれています。
自分の口座の会社を確かめる3つの方法
金融庁のページには、次の3つが載っています。
- 暗号資産交換業者登録一覧(PDF・Excel):登録を受けている会社の一覧です。
- 金融事業者一括検索:名前や電話番号を入れて、金融庁から登録などを受けている会社を探せます。
- 無登録で暗号資産交換業を行う者の名称等:金融庁が警告書を出した業者の名前が載っています。
金融庁は、取引の前に、相手が登録を受けているか、無登録業者として警告を受けていないかを確かめるよう注意しています。
使っているアプリや、口座を作ったときのメールに書かれている会社の名前を、この一覧で引いてみてください(この手順は当校の提案です)。
なお、Binanceグローバルが日本でどういう扱いになっているかは、この記事では確かめていません。使っている人は、上の3つの方法で、自分で確かめてください。
先に予想してください:日本円の出金も止まっている?
Binance Japanは、今回の件を受けて「予防的措置として、当社では暗号資産の出庫を一時的に停止しております」と書いています。
では、Binance Japanの口座を持っている人は、このお知らせが出た時点で、日本円の出金もできなかったのでしょうか。
A できなかった。暗号資産の出庫が止まっているのだから、口座のお金は全部動かせない
B できた。止まっているのは暗号資産の出庫で、日本円の出金は別だった
AかBかを決めてから、次の章を読んでください。
4. 自分の口座で確かめる3つ
ここからは、使っている会社の公式のお知らせで何を見るかを、3つに分けて書きます。Binance Japanについてはお知らせの原文で、Binanceグローバルについては報道の内容で書きます。ほかの取引所を使っている人も、同じ3つを、その会社のお知らせで確かめてください(当校の提案です)。
① 預かり資産の保管場所:流出した所と、自分の資産は同じ場所か
2章のとおり、Binance Japanは、利用者の暗号資産を自社のコールドウォレットで管理していて、流出したBinanceグローバルのホットウォレットとは別で管理している、と書いています。お知らせのFAQでも、自社でのセキュリティ事案は確認されているかという問いに「いいえ」と答えています。
Binanceグローバルについては、1章・2章の報道のとおり、流出はホットウォレットからで、広報担当者は顧客資金は影響を受けていないと説明した、と伝えられています。ただし、テレット氏は、補填資金がなければ一部の顧客の回収額が減る可能性もあったと解説しています。Binanceグローバルを使っている人は、「影響なし」の一言だけでなく、③の補償の方針まであわせて見てください。
② 出庫・出金の状況:何が止まっていて、何が動いているか
答えはBです。 Binance JapanのFAQは、こう書いています。
A3. 当社では予防措置として、すべての暗号資産の出庫を一時的に停止しています。なお、暗号資産取引、暗号資産の入庫及び法定通貨の出入金は通常通りご利用可能です。
止まっているのは、暗号資産を口座の外へ送り出す「出庫」です。日本円(法定通貨)の入金・出金は、お知らせの時点で通常どおりでした。お知らせの「現在のBinance Japanのサービス状況」は、次のとおりです。
| 何を | お知らせの時点の状況(原文) |
|---|---|
| (暗号資産)入庫 | 通常どおり稼働しています。 影響はなく、引き続きご利用いただけます。 |
| (暗号資産)出庫 | 引き続き一時停止中です。 48時間以内の再開を見込んでおり、詳細が確定次第あらためてお知らせいたします。 |
| 暗号資産取引(販売所・取引所) | 通常どおり稼働しています。 |
| 法定通貨の入出金 | 通常どおり稼働しています。 |
このお知らせは、10月30日18時に出たものです。この記事を書いた11月1日の時点で、出庫が再開したかどうかは確かめられていません。今の状況は、Binance Japanのお知らせの続報で確かめてください。
Binanceグローバルについては、1章のとおり、CoinPostによると出金サービスを一時停止し、安全確認の完了を条件に段階的に再開する目標を示しています。こちらも、実際に再開したかは確かめられていません。
③ 補償の方針:被害が出たら、どうすると書いているか
Binance JapanのFAQは、こう書いています。
A4. 現時点で当社ユーザーへの被害は確認されていません。万が一、当社ユーザーにおいて、本事案による被害が確認された場合には、当社が当該被害額を全額補償することを予定しています。
ポイントは2つです。お知らせの時点で、Binance Japanの利用者の被害は確認されていないこと。そして、全額補償は「被害が確認された場合」の「予定」として書かれていることです。
Binanceグローバルについては、1章のとおり、CoinPostによると、損失を利用者ではなく同社が負担するとして、補償の資金を確保したと明らかにしています。ただし、補償の対象や受け取り方、時期の具体的な手順は、この記事では確かめられていません(5章)。
続報は、どこで見るか
Binance JapanのFAQは、今後の情報について「当社のホームページ上のお知らせや公式ソーシャルメディアを通じて情報を提供します」と書いています。問い合わせは、アプリのカスタマーサポートのチャットでも受け付けていて、オペレーターの受付時間は月曜日から日曜日の午前9時から午後11時(日本時間)です。
続報や補償の連絡は、届いたメールやSNSのメッセージのリンクから開かず、自分で開いた公式のホームページやアプリで確かめてください(この手順は当校の提案です)。金融庁の利用者向けのページにも、「当庁を騙った電子メールや動画にご注意ください」という注意の案内が並んでいます。
5. まだ分からないこと
- バイナンス(グローバル)自身の発表の中身。 当校では本文の写しを保存できていません。この記事の流出の数字・時刻・補償の資金は、CoinPost・NADA NEWSの報道によるものです。
- 出金・出庫が再開したか。 Binance Japanは48時間以内の再開を見込むと書き、バイナンス(グローバル)は段階的に再開する目標を示したと報じられていますが、11月1日の時点で再開を確かめられていません。
- 補償の対象・受け取り方・時期。 具体的な手順は、この記事では確かめられていません。
- 原因と、誰が行ったか。 CoinPostによると、バイナンスは技術的な調査結果を共有し、事後検証の報告書も公表する方針です。この記事では、確定した発表が出ていない話は扱いません。
- 準備金証明の結果。 CoinPostによると、利用者が残高の裏付けを確かめられる準備金証明(Proof of Reserves)の結果を、11月2日(月)までに用意する予定とされています。
- Binanceグローバルの日本での扱い。 3章のとおり、金融庁の一覧で自分で確かめてください。
塾長とミサキ(続き)
乾燥機が止まったころ、ミサキは電話をつないだまま、お知らせを最後まで読み終えていた。
ミサキ
塾長
ミサキ
塾長ミサキはスマホのカレンダーを開き、2日の欄に「準備金証明」と入れてから、乾燥機の扉を開けた。
今日の確認
- ニュースの会社と、自分の口座の会社を分ける:アプリや口座を作ったときのメールにある会社名を見る。名前に「バイナンス」と付いても、Binanceグローバルと Binance Japan は別の名前で発表している。
- その会社が登録を受けているかを確かめる:金融庁の「暗号資産交換業者登録一覧」か「金融事業者一括検索」で引く。「無登録で暗号資産交換業を行う者の名称等」もあわせて見る。
- 使っている会社の公式のお知らせで、3つを見る:①保管場所(流出した所と同じか、別か) ②何が止まっていて、何が動いているか(暗号資産の出庫と、日本円の出金は別のことがある) ③補償の方針(「被害が確認された場合」「予定」などの条件まで読む)。
- 見出しの大きな数字は、何の金額かを確かめる:流出した額か、補償に確保した額か。
- 続報や補償の連絡は、自分で開いた公式のページやアプリで見る:届いたメッセージのリンクからは開かない。
この記事の一次情報と確認日
下の資料は、本文を取得して保存した写しと引用を照らし合わせています(確認日:2026年11月1日)。
一次情報
- Binanceグローバルでのセキュリティ事案を受けた、Binance Japanの対応に関するお知らせ(Binance Japan株式会社、PR TIMES、2026年10月30日18時00分):日本時間10月30日未明に確認されたBinanceグローバルの事案であること。利用者の暗号資産を本邦法令の定めに従い自社のコールドウォレットで管理し、Binanceグローバルのホットウォレットとは別で管理していて、影響は確認されなかったこと。予防的措置として暗号資産の出庫を一時停止し、48時間以内の再開を見込むこと。入庫・暗号資産取引・法定通貨の入出金は通常どおりであること(FAQ Q3)。利用者の被害は確認されておらず、確認された場合は全額補償を予定していること(FAQ Q4)。情報はホームページのお知らせと公式ソーシャルメディアで出すこと(FAQ Q5)。チャットの受付時間。倒産した場合に返還できない可能性があるという注意書き。「暗号資産交換業者 関東財務局長 第00031号」の記載。
- 暗号資産の利用者のみなさまへ(金融庁):国内で暗号資産と法定通貨の交換サービスを行うには登録が必要なこと。登録を受けた事業者か確かめること。暗号資産交換業者登録一覧・金融事業者一括検索・無登録で暗号資産交換業を行う者の名称等。当庁を騙った電子メールや動画への注意の案内。
- 無登録業者との取引は要注意!! ~無登録業者との取引は高リスク~(金融庁、令和8年10月7日更新):登録にあたって求められる態勢(分別管理・トラブルの窓口・システムの安全稼働の管理など)。無登録業者とのトラブルの例。登録一覧と警告を受けた業者の一覧で確かめること。取引の前に、相手が登録を受けているか、警告を受けていないかを確かめること。
報道(二次情報)
- バイナンス、ハッキング被害の補償に約1兆円を確保(CoinPost、2026年10月31日):10月30日午前5時5分ごろ(日本時間)のホットウォレットの侵害と、約63億ドル相当の流出、対象の銘柄。63億4000万ドル超(約1兆円)の補償の資金、SAFUと自社の財務資金。出金の一時停止と、段階的に再開する目標。準備金証明の結果を11月2日までに用意する予定。技術的な調査結果と事後検証の報告書の公表の方針。テレット氏が伝えたバイナンスの広報担当者の説明と「オンライン接続型のホットウォレット」、補填資金がなければ一部の顧客の回収額が減る可能性もあったという同氏の解説。
- 【墨汁うまい氏寄稿】バイナンスで約1兆円の暗号資産流出、SAFUでも補填できないハッキング被害の全貌(NADA NEWS):日本時間2026年10月30日、複数のホットウォレットから約63億ドル(約9928億円相当)が流出したこと。
この記事が確認していないこと
- バイナンス(グローバル)の公式の発表の本文(流出の額・補償・出金の再開の予定など。報道を通してだけ確かめている)
- 出金・出庫が実際に再開したか(11月1日の時点)
- 補償の対象・受け取り方・時期の具体的な手順
- 原因と、誰が行ったか(確定した発表)
- Binanceグローバルが日本で暗号資産交換業の登録を受けているかどうか(金融庁の一覧で自分で確かめてください)
- 日本の法令が、交換業者の暗号資産の管理の方法をどう定めているかの細部
この記事は情報提供のみを目的としており、特定の取引所・サービスへの登録・利用を勧めるものではありません。
連載「ミサキの0からクリプト」
暗号資産をまだ買ったことのない会社員のミサキが、塾長に質問しながら一つずつ確かめていく連載です。第0話から読む →








