ミサキの0からクリプト|第20話
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ビットコイン予備校の運営者兼相談役。
Web事業運営とクリプト実務を経験し、目立つ数字や高利回りを先に見て出口確認が遅れた自身の失敗を、初心者に繰り返させないために相談に乗っている。答えを急がせず、ミサキが自分で確認質問を作れるように、順番を整えることを大事にしている。
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資産運用を学び始めた会社員。
NISAなどはすでに始めているが、暗号資産は未購入・未経験。分からないことをそのまま質問できる一方、大きな数字を先に比較してしまう癖がある。塾長とは初心者向けの勉強会で知り合って数か月になる。
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画面を押すと閉じます第19話で、母に「もう一度一緒に見よう」と送ったあと、カレンダーの通知「年末の旅行、予約」に気づいたミサキが、翌日の日曜の午後、駅前の旅行会社で、去年と同じ旅行の見積もりを出してもらう場面です。
「ホテルは、去年と同じなのに」。見積もりの合計に驚いたミサキは、一行ずつ比べて、変わったのがホテルではないことに気づきます。

晩秋の日曜の午後。ミサキは、駅前の旅行会社のカウンターに座っていた。
毎年、年末には海外へ旅行に行く。今年も、去年と同じホテルに、同じ四泊のつもりだ。昨日、カレンダーの通知を見て、今日のうちに見積もりだけでも出してもらおうと決めた。
待っている間に、スマートフォンの写真をさかのぼる。去年、この店でもらった見積もりの紙を撮った一枚があった。合計、17万2,000円。
店の人が、印刷したばかりの紙をカウンターに置いた。
お待たせしました。
去年と同じホテル、同じ日数で、こちらになります
合計の欄に、18万5,000円とあった。
ミサキえ……去年より、1万3,000円も高いんですか。
同じホテルなのに
紙を持つ手に、思わず力が入った。去年より高い。それだけで、頭の中がいっぱいになりかける。
そのとき、おとといの夜、メモ帳のいちばん上に書き足した一行を思い出した。「0.大きい数字から比べない」。
ミサキすみません。
去年のと、一行ずつ比べてもいいですか
スマートフォンの写真を、紙の横に並べる。航空券は、去年が8万8,000円で、今年が9万2,000円。ホテル代は、去年が8万4,000円で、今年が9万3,000円。
いちばん上がっていたのは、ホテル代だった。航空券の4,000円がなぜ上がったのかは、この紙だけでは分からない。まずは、大きく上がったホテル代から見ることにした。
ミサキホテル代が、9,000円も上がってますね。
ホテルが値上げしたんですか
いえ、このホテルのお部屋代は、現地のお金のドルで決まっていて、1泊150ドルなんです。
そこは、去年と同じなんですよ
ミサキ同じ150ドルなのに、円だと高くなるんですか
はい。
最近は円安なので、ドルでは同じお値段でも、円にすると高くなってしまうんです
円安。ニュースで何度も聞いた言葉だった。円が安い、という意味だとは思う。でも、何に比べて安いのかは、考えたことがなかった。
ミサキは、スマートフォンの電卓を開いた。1泊150ドルの四泊で、600ドル。去年のホテル代の8万4,000円を、600で割る。
画面に「140」と出た。
今年の9万3,000円も、600で割ってみる。「155」。
ミサキ1ドルが、去年は140円で、今年は155円……。
ホテルは変わってない。
変わったのは、円のほうなんだ
はい、そういうことなんです。
同じ1ドルに替えるのに、去年より多くの円が要るんです
ミサキ今日は、この見積もりをいただいて帰ってもいいですか。
一度、ちゃんと考えてみます
もちろんです。
お決まりになりましたら、ご連絡ください
店を出ると、駅前の通りは、もう夕方の色になっていた。見積もりの紙を四つに折って、バッグにしまう。
ホームで電車を待ちながら、ニュースアプリを開いた。為替の欄に、今日の「1ドル」の数字が出ている。電卓で出した155円と、同じではなかった。
見積もりの数字と、ニュースの数字。私は、どっちを見ればいいんだろう。
目次
円安とは? 同じ値段でも、円で払うと高くなるしくみ
・為替相場(為替レート)とは何か
・「円安」「円高」の意味と、数字の見方
・円安だと、外国の通貨で値段が決まっているものが、円で払うと高くなる理由
この記事は、為替の先行きを予想したり、外貨や特定の商品・サービスをすすめたりするものではない。また、物語の見積もりの金額と「1ドル140円」「1ドル155円」は、しくみを説明するための仮の数字で、実際の相場とは関係ない。
為替相場(為替レート)は、円とドルのように、ちがう通貨を交換するときの比率だ。日本銀行の解説によると、変動相場制のもとでは、誰かが一方的に決めるのではなく、外国為替市場での需要と供給のバランスで決まる。物の値段が決まるしくみと同じだという。
では、円安とは何か。日本銀行は、円の、ほかの通貨に対する価値が低い状態を「円安」、高い状態を「円高」と説明している。例として挙げているのが、1万円をドルに替える場合だ。
- 1ドル=100円なら、1万円は100ドルになる
- 1ドル=80円なら、1万円は125ドルになる(円高。同じ1万円で、より多くのドルに替えられる)
- 1ドル=125円なら、1万円は80ドルになる(円安。同じ1万円で替えられるドルが少ない)
ここで、予想してみてほしい。1ドル=140円が、1ドル=155円になった。これは円高だろうか、円安だろうか。
答えは、円安だ。数字が大きくなったので「円が高くなった」と思いやすいが、ここで増えたのは、1ドルに替えるのに払う円の数だ。同じ1ドルに、より多くの円が要る。それだけ、円の価値が下がったことになる。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の用語集も、1ドル=100円が1ドル=110円になれば、円の価値が下がったので「円安」と呼ぶ、と説明している。
このしくみを、ミサキの見積もりに当てはめてみる。ホテル代は、1泊150ドルの4泊で600ドル。ドルでの値段は去年と同じだ。
- 1ドル=140円なら、600ドル×140円=8万4,000円
- 1ドル=155円なら、600ドル×155円=9万3,000円
ドルでの値段が変わらなくても、円で払う額は9,000円増える。海外のホテル代のように、外国の通貨で値段が決まっているものを円で払うときは、円安のほうが、円での支払いが多くなる。J-FLECの用語集も、円安は、外国から物を買う輸入には不利になると説明している。
最後に、ミサキが帰りに気づいたことにふれておく。日本銀行によると、ニュースで伝えられる為替相場は、ふつう、銀行どうしが取引する「インターバンク取引」の相場だ。個人が銀行で両替するときなどの相場は、それとは別の、小売りの段階の相場になる。見積もりから計算した「1ドル何円」とニュースの「1ドル何円」をどう読み分ければいいかは、次の話で確かめる。
ミサキ、円安を確かめる
次は、通勤電車にて。見積もりから計算した数字とニュースの数字は、なぜちがうのか。ミサキは、塾長にチャットで聞いてみます。
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