ミサキの0からクリプト|第22話
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ビットコイン予備校の運営者兼相談役。
Web事業運営とクリプト実務を経験し、目立つ数字や高利回りを先に見て出口確認が遅れた自身の失敗を、初心者に繰り返させないために相談に乗っている。答えを急がせず、ミサキが自分で確認質問を作れるように、順番を整えることを大事にしている。
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資産運用を学び始めた会社員。
NISAなどはすでに始めているが、暗号資産は未購入・未経験。分からないことをそのまま質問できる一方、大きな数字を先に比較してしまう癖がある。塾長とは初心者向けの勉強会で知り合って数か月になる。
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画面を押すと閉じます第21話で、ニュースの為替相場と見積もりの「1ドル」は種類のちがう数字だと知り、「毎日の買い物も高くなっているのか」と気になったミサキが、その週の土曜の午前、家の近くのスーパーで、いつもの買い物をする場面です。
「100円も、上がってる」。いつものコーヒーの値札と、財布にはさまっていた春のレシート。一つずつ比べたミサキは、変わったのが値札だけではないことに気づきます。

晩秋の土曜の午前。ミサキは、家の近くのスーパーで、かごを片手にいつもの棚を回っていた。
月曜の昼休みに、旅行会社へ電話をして聞いた。見積もりの「1ドル」は、見積もりを作った日に、その会社が決めていた値段で計算したのだという。旅行の予約は、まだ決めていない。
コーヒーの棚の前で、足が止まった。毎朝飲んでいる、いつものドリップコーヒーの10袋入り。値札に「698円」とある。
前は、もっと安かった気がする。
ミサキあれ……。
これ、こんな値段だったっけ
財布を開くと、カードの間に、捨て忘れたレシートが何枚もはさまっていた。いちばん古いのは、4月の日付だ。同じスーパーの、同じコーヒー。「598円」。
ミサキ100円も、上がってる。
旅行も高くなってたし、やっぱり円安のせいなんだ
そう言いかけて、ミサキはレシートを持つ手を止めた。月曜の夜、メモ帳の「0.大きい数字から比べない」の横に足した一行を思い出す。「誰の、いつの数字か」。
値札に書いてあるのは、今日の値段だけだ。なぜ上がったのかは、どこにも書いていない。
ミサキ……決めつけるのは、まだ早いか。
ほかのも、比べてみよう
4月のレシートには、今日もかごに入れるつもりの物が並んでいた。売り場を回りながら、一つずつ値札と見比べる。
食パンは158円が178円。卵は258円が278円。牛乳は218円で、4月と同じだった。キャベツは198円が178円で、こちらは安くなっていた。
ミサキ上がった物も、同じ物も、安くなった物もある。
みんな、ばらばらなんだ
レジに並びながら、スマートフォンの電卓で足してみる。4月は、この五つで1,430円。今日は、同じ五つで1,550円。
一つ一つの動きはばらばらでも、合わせると120円高くなっていた。
支払いのときに、財布から1万円札を出した。4月にこの店で払ったときも、出したのは1万円札だった。
店員さんがお釣りを数えている間、ミサキは考えた。同じ五つを買うのに、今日は4月より120円多く払う。1万円札で同じ買い物をしても、手元に戻るお釣りは、4月より120円少ない。
ミサキお札は、4月も今日も1万円のまま。
変わったのは、このお札で買える量のほうなんだ
ふと、子どものころのことを思い出した。母とスーパーに来ると、母はよく値札を指さして、「昔はこれ、半分くらいだったのよ」と笑っていた。あのころは、大人の決まり文句だと思って聞き流していた。
ミサキお母さんの「昔は」も、同じ話だったのかも。
今度の電話で、昔は何がいくらだったのか、聞いてみよう
エコバッグを肩にかけて、店を出る。帰り道、銀行のアプリで普通預金の残高を見た。数字は、先月から減っていない。
でも、この数字で買える物は、4月と同じではないのかもしれない。円のまま持っているのと、ドルのような外貨で持つのとでは、何がちがうんだろう。
目次
物価が上がると、現金の価値はどうなる? 1万円札で買える量の話
・「物価」とは何か、何で測るか
・値段の上がり方は、品物ごとにちがうこと
・物価が上がると、同じ1万円で買える量が減ること
この記事は、物価や為替の先行きを予想したり、特定の商品・サービスをすすめたりするものではない。また、物語のコーヒーや食パンなどの値段は、しくみを説明するための仮の数字で、実際の値段とは関係ない。
まず、物価とは何か。日本銀行は、物価を「財(モノ)やサービスの価格を総体的に捉えたもの」と説明している。一つの品物の値段ではなく、いろいろな品物やサービスの値段を、まとめて見たものだ。
一方で、一つ一つの値段は、基本的にはその品物やサービスの需要と供給のバランスを反映する、と日本銀行は説明している。日本銀行は、別の解説(下の「昭和40年の1万円」の質問)でも、財やサービスの種類によって価格の上昇率はまちまちだ、と書いている。ミサキのかごの中に、上がった物、同じ物、安くなった物があったように、値段の動き方は品物ごとにちがう。一枚の値札だけでは、物価全体の動きは分からない。
では、物価全体は何で測るのか。消費者が買うモノやサービスの物価を表すものとして、総務省統計局が作っている消費者物価指数(CPI)がある。日本銀行は、2013年1月に「消費者物価の前年比上昇率2%」を「物価安定の目標」として定め、消費者物価指数の動きを特に注視しているという。
ミサキが気にした円安との関係にもふれておく。日本銀行は、先行きの物価の動きを考えるときには、為替レートや海外の商品市況の変化、賃金の動きなどが物価に与える影響も考える必要がある、としている。ただし、ミサキのコーヒーがなぜ100円上がったのかは、値札からは分からない。
ミサキは4月と今日の半年ほどで比べたが、ここでは、もっと長い目で見てみる。予想してみてほしい。昭和40年に1万円で買えたものは、今だと、だいたいいくらになるだろうか。少し考えてから、次へ進んでほしい。
日本銀行の試算(2026年2月時点)では、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)を使うと、令和7年の物価は昭和40年の約4.8倍で、約4.8万円になる計算だ。企業どうしで取引される財の値段を表す企業物価指数を使うと約2.6倍で、約2.6万円になる。日本銀行は、何を物差しにするかで結果はまちまちなので、あくまでも参考の数字として考えてほしい、とも書いている。
「1万円」という金額は、昭和40年も今も同じだ。それでも、昭和40年に1万円で買えたものを今買おうとすると、消費者物価指数を使った試算では約4.8万円かかる。同じ1万円で買える量が、それだけ少なくなったということだ。物価が上がると、お札に書かれた金額は変わらなくても、その金額で買える量が減る。ミサキがレジで気づいたのは、このことだ。
まとめると、値上がりに気づいたら、次の3つを見ておきたい。
- 一つの品物の値段か、いろいろな物をまとめた物価か
- いつと比べているか
- なぜ上がったのか(値札だけでは分からないので、決めつけない)
お金を円のまま持つのと、外貨で持つのとでは何がちがうのか、どんな手数料がかかるのかは、この先の話で確かめる。
ミサキ、外貨預金を調べる
次は、予備校の学習スペースにて。円ではなく外貨で預けると、何がちがうのか。ミサキは、塾長と一緒に外貨預金のしくみを確かめます。
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