ミサキの0からクリプト|第15話
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ビットコイン予備校の運営者兼相談役。
Web事業運営とクリプト実務を経験し、目立つ数字や高利回りを先に見て出口確認が遅れた自身の失敗を、初心者に繰り返させないために相談に乗っている。答えを急がせず、ミサキが自分で確認質問を作れるように、順番を整えることを大事にしている。
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資産運用を学び始めた会社員。
NISAなどはすでに始めているが、暗号資産は未購入・未経験。分からないことをそのまま質問できる一方、大きな数字を先に比較してしまう癖がある。塾長とは初心者向けの勉強会で知り合って数か月になる。
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画面を押すと閉じます第14話で、分配金は毎月出ているのに母の残高が減っていると気づいたミサキが、翌日の火曜の夜、仕事帰りに予備校の学習スペースで塾長と書類の写真を見る場面です。
「これ、母のお金が戻ってきてるだけ?」。毎月届く分配金の内訳に、ミサキは見慣れない一行を見つけます。

晩秋の火曜の夜。仕事帰りに寄った予備校の学習スペースには、ほかに誰もいなかった。
机をはさんで座ると、ミサキはコートを椅子の背に掛け、スマートフォンを塾長の方へ向けた。
ミサキ昨日の続きです。
母の「分配金のお知らせ」、去年の分と今年の分を撮ってきました
ミサキ分配金は、毎月ちゃんと出てるんです。
なのに、残高の数字は去年より小さくて
塾長見せて。
……分配金の金額の下、何行かに分かれていない?
ミサキは写真を拡大した。分配金の金額の下に、小さな字で二つの行が並んでいる。
ミサキ分かれてます。
「普通分配金」と、「元本払戻金(特別分配金)」
ミサキ最近の分は、普通分配金が「0」で……
下の行の方に、全部入ってます
塾長なるほど。
その二つは、分配落ち後の基準価額と、受益者ごとの個別元本を比べて振り分けられていて……
ミサキ塾長。
それ、母に言っても伝わりません
塾長……すまない。
じゃあ、その行の名前を、そのまま読んでみて
ミサキは、下の行の字を目でなぞった。元本。最初に出したお金。払戻金。払い戻される、お金。
ミサキ……え。
これ、母のお金が戻ってきてるだけ?
塾長名前のとおりなら、そうなる。
念のため、業界団体の説明でも確かめよう
塾長がノートパソコンで用語集を開き、二人で画面をのぞきこんだ。元本払戻金は元本の一部を払い戻すもので、受け取ると、その分だけその人の元本が減る、とあった。
ミサキ母は、利息みたいに思ってました。
「毎月お金が入るんだから、増えてる」って
塾長そう思うのは、無理もない。
毎月、口座にお金が入ってくるんだから
ミサキはしばらく、何も言わなかった。怒りたいわけではなかった。銀行の人にも、母にも。
ミサキ……これ、どう言えばいいんだろう。
母、毎月入ってくるの、喜んでたのに
塾長急がなくていい。
今日みたいに、書類を一緒に見ながら話せばいいと思う
ミサキはメモ帳を開いて、一行だけ書いた。「毎月入るお金=増えた分、とは限らない」。
書きながら、先週の金曜の夜、電話で母が笑って言ったことを思い出した。「あれはちゃんとしてるから大丈夫よ。ほら、銀行だもの」。
目次
投資信託の分配金は、利息ではない。元本の払い戻しが混ざることがある
・分配金がどこから払われるか
・「普通分配金」と「元本払戻金(特別分配金)」のちがい
・分配金を受け取ることと、複利の関係
投資信託の分配金は、決算のときに、投資信託の収益などの一部を、持っている口数に応じて払うものだ。決算の回数は商品ごとに決まっていて、毎月のものから年1回のものまである。毎月決算をして分配金を出す商品は「毎月分配型」と呼ばれる。金額は決算の内容や分配の方針で変わり、出ないこともある。
分配金は、預金の利息とは性質が違う。預金の利息は、元金が変わらないまま払われる。一方、分配金は投資信託の財産の中から払われる。そのため、分配金を払うと、その分だけ基準価額(投資信託の値段)が下がる。また金融庁の資料では、分配金は、受け取る人自身がもうかっているかどうかに関係なく、投資信託に収益などがあれば支払われる、とされている。
分配金は、受け取る人にとって、次の2つに分かれる。分ける基準は、その人が買ったときの値段(個別元本)だ。
- 普通分配金:分配金のうち、その人にとって利益にあたる部分。ふつうは税金がかかる。分配金を払ったあとの基準価額が個別元本と同じか上なら、分配金の全部が普通分配金になる。
- 元本払戻金(特別分配金):分配金を払ったあとの基準価額が個別元本を下回るとき、その下回った部分。残りが普通分配金になる。その人が出したお金(元本)の一部が戻ってきているもので、利益ではないため税金はかからない。受け取った分だけ、その人の個別元本は下がる。
資産運用業協会の用語集にある例で見てみる。基準価額が10,500円のときに一口買い、その後10,800円に上がったところで、700円の分配金が出たとする。分配金を払ったあとの基準価額は10,100円で、買ったときの10,500円より400円低い。この場合、700円のうち300円が普通分配金、400円が元本払戻金になり、個別元本は10,100円に下がる。
つまり、毎月お金が入ってきていても、その中身が元本払戻金なら、増えた分を受け取っているのではなく、自分が出したお金の一部を返してもらっていることになる。分配金のお知らせを見るときは、合計の金額だけでなく、普通分配金と元本払戻金の内訳を確かめたい。
もう一つ、分配金を受け取ると、その分は投資信託の中で運用されなくなる。分配金を受け取らずに同じ投資信託に再投資すれば、口数が増えて、増えた分がまた増えていく複利の効果が見込める。分配金を受け取ることには、手元に現金が入るよさがある一方で、この複利の効果を逃しやすい。どちらが合うかは、そのお金を何に使いたいかで変わる。
ミサキ、「元本保証」を疑う
次は、晩秋の銀行のロビー。ミサキが一人で、並んだパンフレットの小さな字を読んでみます。
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