
「ソラナは速いブロックチェーン」。暗号資産(仮想通貨)の説明やニュースで、よく見かける言い方です。2026年10月24日には、CoinPostが「ソラナ、取引確定時間が約85分の1に」という見出しの記事を出しました。数字だけを見ると、「送ったお金が85倍速く届くようになった」と読めるかもしれません。
この記事で、先に答えを1つだけ書きます。
今回のニュースの「速い」は、取引が最終的に確定するまでの時間の話です。今回の更新「Alpenglow(アルペングロー)」は、その時間を、これまでの約12.8秒から約150ミリ秒(0.15秒。中央値)にすることを目指しています。ただし150ミリ秒は、開発元が計算(シミュレーション)で出した見込みです。その計算の最初の段階にあるデータを配る新しい仕組み(Rotor)も、まだ入っていません。だから数字は「目指す」「見込み」として読み、続きは公式の発表で確かめてください。
ソラナとSOLが何かから順に、開発元の説明(英語)と公式の文書で確かめます。どれも記事の最後にリンクを置いているので、同じ文を自分で開けます。
※ 情報提供のみを目的としています。SOLの売買や、特定の取引所・サービスへの登録は勧めません。価格の見通しも示しません。確かめられなかったことは、記事の後半にまとめています。
目次
塾長とミサキ
十月下旬の夜。ソファでニュースアプリを眺めていたミサキから、塾長にメッセージが届いた。
ミサキ
ミサキ
塾長既読がついてから、返事まで少しかかった。
ミサキ
ミサキ
塾長
ミサキ
塾長1. ソラナとSOL:ネットワークの名前と、そこで使うトークン
ソラナ(Solana)は、ブロックチェーンの名前です。SOL(ソル)は、そのソラナのネットワークのトークンです。ソラナの公式の用語集(英語)は、SOLを、ソラナのネットワークのネイティブトークン(そのネットワーク自身のトークン)として説明しています。
当校の連載の第4話で、ミサキは「イーサリアム」という仕組みと、そこで使う「ETH」を見分けました。ソラナとSOLも、同じように「仕組みの名前」と「そこで使うトークンの名前」の組み合わせとして読めます。
SOLは、小さく分けられます。 小さな単位に「lamport(ランポート)」があり、公式の用語集によると1 lamportは0.000000001 SOL(10億分の1 SOL)です。
手数料も、この単位で決まっています。 公式の文書によると、ソラナで取引を送るときの基本料金は、現在、署名1つにつき5,000 lamports(0.000005 SOL)です。
ソラナは「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」という型のブロックチェーンです。 Alpenglowの開発元Anza(アンザ)の説明でも、ソラナはプルーフ・オブ・ステーク型のブロックチェーンとして書かれています。公式の用語集によると、ネットワークの参加者(バリデーター)は、新しいブロックを作り、台帳に加わる取引を確かめます。PoSの「ステーク」は、同じ用語集で、バリデーターの不正な振る舞いが証明されたときにネットワークに没収されるトークン、と説明されています。
国内の取引所の説明も見てみます。たとえばbitFlyerは、2026年6月24日に販売所でSOLの取り扱いを始めたときのお知らせで、ソラナを「高速かつ低コストの取引処理を可能にするブロックチェーン」と説明しています。この記事では、この「高速」の中身を確かめます。
2. 「速い」には2つの意味が混ざりやすい
「速い」という言葉には、2つの話が混ざりやすくなっています。
- たくさん処理できること:1秒あたりにどれだけの取引をさばけるか。公式の用語集では「tps(1秒あたりの取引の数)」という言葉が出てきます。
- 1つの取引が終わるまでが短いこと:送った取引が、もう取り消されない状態になるまでの時間。
bitFlyerのお知らせの「高速」や、同じお知らせにある「高い処理能力」が、このどちらを指すのかは、お知らせの文には書かれていません。
今回のAlpenglowで変わる数字は、2つ目です。 冒頭の見出しにあった「取引確定時間」も、こちらの話です。
「届いた」と「確定した」は別
ミサキがつまずいたのは、「届いたら終わりではないのか」という所でした。
ブロックチェーンでは、取引はブロックにまとめられ、参加者たちが「このブロックで決まり」と合意して、はじめて最終的に決まります。この「もうひっくり返らない」状態になることを、確定(ファイナリティ)と呼びます。Alpenglowの公式の提案文書は、あるブロックが確定したら、その後に確定するブロックはすべてその続きになる、と書いています。確定したブロックは、後から別のブロックに入れ替わらない、ということです。
これまでのソラナでは、この確定に時間がかかっていました。
- 公式の提案文書(SIMD-0326)によると、これまでの合意の仕組み「TowerBFT(タワーBFT)」では、確定までの時間は12.8秒でした。Anzaの説明では、ブロックが作られてから確定まで約12.8秒でした。
- ただし、同じ提案文書は、TowerBFTにはそれより早い「仮の確認」もあると書いています。Anzaの説明によると、待ち時間を1秒より短くするために、ソラナは「オプティミスティック・コンファメーション(楽観的な確認)」という考え方を入れていました。
つまり、これまでのソラナは「12.8秒待たないと何も分からない」のではなく、早めの仮の確認があり、その後に最終的な確定が来るという2段の形でした。
アプリの画面に出る「完了」が、この2段のどちらを指すのかは、この記事では確かめていません。ただ、見出しの「確定」は、2段のうち後ろの、もうひっくり返らない段階のほうです。
3. 先に予想してください
Alpenglowで、確定までの時間は「約150ミリ秒」になる、と言われています。冒頭の見出しの「約85分の1」は、12.8秒と150ミリ秒を比べた数字です(12.8秒÷0.15秒は約85。当校の計算)。
この「約150ミリ秒」は、どんな数字でしょうか。
ア 新しい仕組みが動いているネットワークで、実際に測った数字
イ 新しい仕組みを動かす前に、計算で見込んだ数字
決めてから、先へ進んでください。
答えはイ(計算で見込んだ数字)です。Anzaは、Alpenglowを発表した2025年5月19日のブログで、次のように書いています。
We expect that Alpenglow can achieve actual finality in about 150 ms (median).
Alpenglowは、実際の確定を約150ミリ秒(中央値)で達成できると見込んでいます。(当校による訳)
そして、同じ段落の最後に、こう添えています。
(These latency numbers are based on simulations with the current mainnet stake distribution, not counting computation overhead.)
(これらの待ち時間の数字は、現在のメインネットのステークの分布をもとにしたシミュレーションによるもので、計算処理にかかる時間は含めていません。)(当校による訳)
このブログは、Alpenglowを初めて発表したときのものです。同じブログは、白書(ホワイトペーパー)に、Alpenglowがどのくらいの性能になるかを知るためのシミュレーションの測定や計算を載せた、とも書いています。150ミリ秒は、本番のネットワーク(メインネット)の、その時点のステークの分布をもとに、計算で出した見込みです。
数字の読み方で、ほかに2つ気をつけることがあります。
- 「中央値」は、真ん中の値です。 いつでも150ミリ秒、という意味ではありません。同じブログは、速いときは100ミリ秒で確定することもある、と書いています。
- 計算処理の時間は入っていません。 上の注意書きのとおりです。
4. Alpenglowで変わること
Alpenglowは、ソラナの「合意の仕組み(コンセンサス)」を入れ替える更新です。Anzaは、Alpenglowを、ソラナの中心の仕組みにとってこれまでで最大の変更だと説明しています。
| これまで | Alpenglow | |
|---|---|---|
| 合意の仕組み | TowerBFT + プルーフ・オブ・ヒストリー(PoH。4章の後半で説明) | 投票と確定は「Votor(ヴォーター)」が受け持つ |
| 確定までの時間 | 12.8秒(それより早い仮の確認もあった) | 約150ミリ秒(中央値)の見込み。シミュレーションによる |
| 仮の確認 | 「楽観的な確認」を使っていた | 公式の提案文書は、より速い本当の確定に置き換わる、と説明 |
| データを配る仕組み | Turbine(タービン) | 当面はTurbineのまま。新しいRotor(ローター)は後から別の提案で |
表の中身を、順に見ます。
TowerBFTとPoHを置き換えます。 Anzaのブログは、Alpenglowへの移行で、TowerBFTとプルーフ・オブ・ヒストリー(PoH)という古い部品を使わなくなる、と説明しています。代わりに、投票とブロックの確定は「Votor」が受け持ちます。
仮の確認より速く、本当の確定が来る形を目指します。 公式の提案文書は、Alpenglowは本当の確定までの時間を、TowerBFTの仮の確認の時間よりも短くする、と書いています。そして、いちばん目に見える変化は、楽観的な確認が、より速い本当の確定に置き換わることだ、としています。2章の「仮の確認→確定」という2段の形が、確定1つにまとまる方向です。
日本語の説明を読むときの注意。 1章で触れたbitFlyerのお知らせ(2026年6月)は、PoHを「独自技術」として、ソラナの特徴に挙げています。PoHは、同じお知らせの注で「連続的なハッシュ計算によってトランザクションの発生順序と経過時間を暗号技術で証明」する仕組みと説明されています。一方、Anzaの説明では、PoHはAlpenglowで置き換えられる部品です。ソラナの公式の用語集にも、確認した日(2026年10月29日)の時点で、PoHを前提にした説明(スロットという時間の区切りの説明)が残っています。ソラナの説明を読むときは、いつ書かれた説明かも見てください。
5. まだ終わっていないこと
データを配る仕組み(Rotor)は、まだこれからです。 公式の提案文書によると、Alpenglowは、投票の部分(Votor)やデータを配る部分(Rotor)などを含む、ひとまとまりの変更の名前です。今回の提案文書が扱っているのはVotorの部分で、Rotorは後から導入し、別の提案文書にする、と書いています。データを配る部分は、当面はこれまでのTurbineのままです。
CoinPostの10月24日付の報道も、アルペングローのローンチはすべて完了したわけではなく、Rotorの導入も予定されている、と伝えています。Rotorがいつ入るかは、当校は確かめられていません。
本番のネットワークで動き出したことは、報道で確かめた範囲です。 CoinPostの10月24日付の報道によると、ソラナの公式Xアカウントが10月21日に、Alpenglowがメインネット(ベータ)でローンチしたと発表しました。CoinPostの10月14日付の記事は、Anzaが10月13日に、10月21日にメインネット(ベータ)でローンチする計画を発表していた、と報じています。ただし、AnzaやSolana Foundationの公式ページの文章で「稼働した」と書いている一文は、当校は見つけられていません。 動き出した後に実際に何秒で確定しているかの、公式の測定結果も見つけられていません。CoinPostの10月24日付の記事は、ソラナ関連の企業ヘリウスのCEOが、確定までの時間が短くなったデータを引いて「ソラナが95%速くなった」とコメントしたとも伝えていますが、これは公式の測定結果ではありません。
6. ソラナの「速い」を見たら、確かめる2つ
ニュースや取引所の説明でソラナの「速い」「◯分の1」を見たら、次の2つを確かめてください。
① 何が終わるまでの時間か
「確定(finality/ファイナリティ)」までの時間なのか、「仮の確認(confirmation)」までの時間なのか。あるいは、時間ではなく「1秒あたりの取引の数」の話なのか。同じ「速い」でも、数字の意味が違います。② 測った数字か、見込みか
英語の説明で「expect(見込む)」「simulation(シミュレーション)」と書いてあれば、見込みとして読みます。日本語の報道なら「目指す」「見込み」「予定」の言い方を見てください。測った数字だと書いてあれば、いつ・どこで測ったのかも一緒に探してください。
あわせて、説明が書かれた日付も見てください。4章のとおり、Alpenglowの前に書かれた説明には、置き換えられる部品が特徴として書かれていることがあります。
7. この記事で言えないこと
- Alpenglowが動き出した後の、実際の確定までの時間は分かりません。 150ミリ秒は、開発元のシミュレーションによる見込みです。実際に測った数字の公式の発表は、当校は見つけられていません。
- 本番のネットワークで切り替わった正確な時刻は書いていません。 報道によって、示されている時刻が違うためです。
- Rotorがいつ入るかは分かりません。
- SOLを持っている人や使っている人にとって、ウォレット・手数料・使い方が変わるのかどうかは、公式の文章で確かめられませんでした。 「何も変わらない」とも「変わる」とも、この記事では言えません。使っている取引所やウォレットのお知らせで確かめてください。
- SOLの値段がどうなるか、買ってよいかどうかについて、この記事は何も判断しません。 確定が速くなることと、値段は別の話です。
塾長とミサキ(続き)
日付が変わる少し前、ミサキからもう一通届いた。
ミサキ
ミサキ
塾長
ミサキ今日できること
次に「ソラナ」「SOL」のニュースで数字を見たら、その数字のすぐ近くに「見込み」「目指す」「シミュレーション」の言葉があるかを探してください。あれば、その数字は見込みとして読みます。6章の②が、それだけで確かめられます。
次に読む
ミサキが「ETHはビットコインの新しい版」だと思い込んでいたところから、ETHがイーサリアムという別の仕組みで使われるお金だと気づく話は、連載の第4話にあります。ソラナとSOLの関係を読むときにも、同じ見方が使えます。
この記事の一次情報と確認日
確認日:2026年10月29日
一次情報
- Anza「Alpenglow: A New Consensus for Solana」(2025年5月19日):Alpenglowがソラナの新しい合意の仕組みで、ソラナはプルーフ・オブ・ステーク型であること、ソラナの中心の仕組みでこれまで最大の変更であること、TowerBFTとプルーフ・オブ・ヒストリーを置き換え、投票と確定をVotorが受け持つこと、TowerBFTではブロックが作られてから確定まで約12.8秒だったこと、1秒未満にするため楽観的な確認を入れていたこと、確定は約150ミリ秒(中央値)の見込みで、速いときは100ミリ秒であること、これらの数字が現在のメインネットのステークの分布によるシミュレーションで、計算処理の時間を含まないこと、白書にシミュレーションの測定や計算を載せたこと。
- SIMD-0326: Alpenglow(Solana Improvement Documents・公式の提案文書):合意の仕組みをPoHとTowerBFTからAlpenglow(Votorの部分)に変える提案であること、AlpenglowがVotor・Rotorなどを含む変更のまとまりであること、Rotorは後から別の提案で導入し当面はTurbineのままであること、TowerBFTの確定までの時間が12.8秒で、それより早い仮の確認もあること、Alpenglowは本当の確定までの時間をTowerBFTの仮の確認より短くすること、楽観的な確認がより速い本当の確定に置き換わること、確定したブロックの後に確定するブロックはすべてその続きになること。
- Solana「Terminology」(公式の用語集・GitHub上の原稿):SOLがソラナのネットワークのネイティブトークンであること、ネイティブトークンの説明、1 lamportが0.000000001 SOLであること、バリデーター・ステーク・tpsの説明、スロットの説明にPoHが出てくること。
- Solana「Fee Structure」(公式の文書・GitHub上の原稿):基本料金が署名1つにつき5,000 lamportsであること。
- 株式会社bitFlyer「ソラナ(SOL)取扱い開始のお知らせ」(2026年6月24日、PR TIMES):販売所でSOLの取り扱いを始めたこと、ソラナを高速かつ低コストの取引処理を可能にするブロックチェーンと説明し、PoSと独自技術のPoHを組み合わせて高い処理能力を実現したと書いていること、PoHの日本語の説明。
二次情報(報道)
- CoinPost「ソラナ、取引確定時間が約85分の1に 『アルペングロー』がメインネットで稼働」(2026年10月24日):ソラナの公式Xアカウントが10月21日にメインネット(ベータ)でのローンチを発表したこと、確定を約12.8秒から約150ミリ秒に短縮することが最大の特徴であること、ローンチはすべて完了したわけではなくRotorの導入も予定されていること、ヘリウスのCEOが「ソラナが95%速くなった」とコメントしたこと。
- CoinPost「ソラナの新コンセンサス『Alpenglow』、10月21日にメインネットでローンチ予定」(2026年10月14日):Anzaが10月13日に、日本時間10月21日23時50分ごろのメインネット(ベータ)でのローンチの計画を発表したこと。
- Solana Compass「Alpenglow Is Pending Activation on Solana Mainnet, With TowerBFT Set to Retire at Slot 459,653,000」(2026年10月20日):切り替えの予定時刻が、Anzaの見込み(10月21日14:00 UTCごろ)とSolana Foundationの案内(13:20 UTCごろ)で違って見えると説明していること(7章「正確な時刻は書いていません」の理由)。
この記事が確認していないことは、7章にまとめています。
この記事は情報提供のみを目的としており、SOLの売買や、特定の取引所・サービスへの登録を勧めるものではありません。価格の見通しは示していません。
連載「ミサキの0からクリプト」
暗号資産をまだ買ったことのない会社員のミサキが、塾長に質問しながら一つずつ確かめていく連載です。第0話から読む →








